消費者庁は7月15日、「第1回食品表示懇談会」を開き、食品表示制度の見直しに向けた2026年度の議論を開始した。今年度最大のテーマは、QRコードなどを活用した「食品表示のデジタル化」の制度設計。昨年度までに整理された基本方針を踏まえ、今年度は、「容器包装に必ず残す表示事項」と「デジタルで代替できる表示事項」の線引きを中心に検討を進め、2027年度中の取りまとめを目指す。
懇談会ではまず、2025年度に実施された食品表示基準改正について報告が行われた。改正では、2023年度食品表示懇談会の提言に基づき、食品表示基準制定以前から残っていた旧JAS法由来、旧食品衛生法由来の個別品目表示ルールを全面的に見直した。
旧JAS法由来の表示ルールでは、2024、2025年度の2年間にわたって40品目以上を検証。横断的な表示基準で代替可能な事項は原則廃止し、食品の定義や名称規制、商品の特性に応じた表示など必要性が認められた事項は維持・修正した。また、食物アレルギー表示についても、全国実態調査を踏まえて改正を実施している。
今年度の中心議題となるデジタル表示については、2025年度の「食品表示へのデジタルツール活用検討分科会」の取りまとめ内容が改めて説明された。
分科会では、デジタル表示は事業者の任意導入とし、消費者はスマートフォンでQRコード(二次元コード)を読み取って食品情報を確認する方式を基本とすることを提案。また、国が一元管理するデータベースを構築するのではなく、各事業者が保有する既存データベースを活用する「分散管理方式」を採用する方向性を示している。
さらに、表示内容の修正履歴を一定期間保存することや、広告情報と義務表示との区分を明確にするため、消費者庁がガイドラインを作成する方針も盛り込まれている。
今年度は、こうした基本方針を具体的な制度へ落とし込む段階に入る。事務局は、食品表示懇談会で、「デジタルで代替可能な表示事項」の議論を進める一方、消費者庁として技術マニュアルの作成にも着手することを説明した。
今後は、生鮮食品や加工食品、業務用食品など食品区分ごとの表示ルール、安全性に関する表示事項、現在簡略・省略が認められている表示項目などを整理しながら、容器包装に必ず表示すべき事項を検討する。また、食品関連事業者への実態調査や、消費者によるデジタル表示の見やすさを検証する実証調査も実施する予定だ。
デジタル表示には、文字を大きく表示できることや、多言語表示、動画による調理方法の紹介、アレルギー情報の検索など、紙面では難しい情報提供が可能になるという利点がある。一方で、スマートフォンを持たない人への配慮や、通信環境に左右されること、必要な情報へたどり着くまでにひと手間かかることなどの課題も指摘されている。
事業者側にも、包装資材の変更を減らせることによるコスト削減や、原材料変更への柔軟な対応、食品回収リスクの低減といったメリットが期待される半面、データ管理システムの構築や維持管理、更新履歴の保存など新たな負担も生じる。このため、制度設計では消費者の利便性と事業者負担のバランスをどう確保するかが重要な論点となる。
さらに会合では、韓国、中国におけるデジタル表示制度の調査結果も報告された。韓国では2025年8月から「eラベル」が導入され、政府が管理する国家データベース「FOOD QR」を活用した一元管理方式を採用している。一方、中国では企業などが管理する分散型データベースを基本としており、日本が検討している方向性に近い仕組みとなっている。
両国ともデジタル表示は任意制度だが、QRコードで提供される情報には、容器包装に表示された事項を含め、すべての義務表示事項を掲載することが義務付けられている。日本でも海外制度を参考にしながら、安全性の確保と消費者の情報アクセスを両立する制度設計を進める考えだ。
食品表示制度は、消費者の商品選択と食品安全を支える重要な基盤。食品包装の省スペース化や情報量の増加が進む中、デジタル技術を活用した新たな表示制度をどのように構築するか。食品表示懇談会では、消費者保護の観点を維持しながら、食品表示の今後のあり方について議論が本格化していくことになる。