シリーズ第5回「消費者教育のいま」消費生活センターと教育委員会の連携・協働のつくり方

連載「消費者教育のいま」
消費者教育をめぐる最新動向や現場の課題を、専門家が分かりやすく解説します。
第5回は、滋賀県近江八幡市における消費生活センターと教育委員会の連携・協働を取り上げます。当初はほとんど接点のなかった両者が、9年間の伴走支援を通じて、どのように関係を築き、交付金終了後も続く仕組みをつくったのか。学校現場での実践を広げ、消費者教育を継続していくための工夫を紹介します。

写真1 教員によるワークショップの様子

 消費者教育推進法が掲げるライフステージに応じた消費者教育を進めるには、教育委員会との連携・協働が欠かせません。しかし、その連携に難しさを感じている自治体も多いのではないでしょうか。今回は、滋賀県近江八幡市における9年間の伴走支援から見えてきたことをお伝えします。


 近江八幡市は人口約8万2千人、小学校12校、中学校4校の地方都市です。消費者庁の交付金を活用した支援が始まった当初、消費生活センターと教育委員会の連携はほとんどありませんでした。しかし、交付金が終了した現在も、自治体の予算で両者が協働する取組が続いています。


 学校現場の実態を知るため、消費生活センターの担当職員が教員にアンケートを実施したところ、「消費者教育として何をしたらよいかわからない」という声が寄せられました。その結果を受け、次の一歩を模索していた担当職員から、当センターに支援の依頼が寄せられました。そこで最初に提案したのが、小中学校の校長や幼稚園・保育園・認定こども園等の園長・所長を対象とした研修や、教員向けワークショップの実施でした。ある学校では、校長の理解を得て夏季校内研修として開催しました。その校長は後に教育長となり連携を後押しする存在となりました。
 並行して担当職員は、教科書を借りに教育委員会を訪ねたり、啓発グッズの配布で各校の校長に会ったりと、顔の見える関係を築きました。こうした研修や地道な『種まき』を重ねる中で、連携・協働の鍵となる人たちと出会いました。

写真2 「やっと気づいた、これも消費者教育」リーフレット表紙

 その一人が、社会科研究会の顧問校長でした。消費者教育が自身の取り組んできた学びと近いことに共感し、この校長を中心に、教育委員会の指導主事や小中学校の教員によるワークショップを立ち上げました。
 まず、日頃の教科の学びを消費者教育の視点で捉え直し(写真1)、授業で実践しました。その成果を「やっと気づいた、これも消費者教育」というリーフレットにまとめ(写真2)、市内の教員に配付しました。教員自身が写真で登場する工夫も加え、「何か面白そうなことをやっている」と関心を持ってもらうきっかけになりました。
 何より大きかったのは、参加した教員が実践を通じて力をつけ、主体的に取り組むようになったことです。そうした姿や実践の成果が、2年、3年と経つうちに教育委員会にも評価されるようになりました。学校教育課長からも「消費者教育を担当している先生は、いつも楽しそうに取り組んでいる」という言葉が聞かれました。


 次の課題は、積み重ねてきた実践の成果を、継続できる仕組みへとつなげることでした。当センターは早くから交付金終了後を見据え、消費者教育コーディネーターの設置や、教育委員会と連携した教員ワークショップの仕組み化に向けて働きかけてきました。


 ワークショップを率いてきた校長の退職を機に、まずは委託事業の中で消費者教育コーディネーターの役割を担っていただきました。一方、継続的なワークショップには当初難色を示していた学校教育課長も、積み重ねた成果を受けてその仕組み化を了承し、委員長を務める体制が整いました。こうして、教育委員会関係者、教員、コーディネーター等が参加し、消費生活センターが事務局を担う仕組みが発足しました。内規を定め、参加する教員の任期を2年とすることで、担当者が替わっても引き継げる体制となり、現在も活動が続いています。