シリーズ第4回「消費者教育のいま」関心はある。でも、行動には結びつかない―高校生調査から考える消費者教育―

連載「消費者教育のいま」
消費者教育をめぐる最新動向や現場の課題を、専門家が分かりやすく解説します。
第4回は、公益財団法人消費者教育支援センター副主任研究員の奥西麻衣子氏が、高校生の消費生活と生活設計に関する調査から、消費者教育の課題を紹介します。お金や社会課題への関心を、日々の消費行動につなげるために、どのような学びが必要なのかを探ります。

調査から見えてきた高校生の姿

 2022年4月、成年年齢が18歳に引き下げられ、高校生のうちに「成年」となる時代を迎えました。高校生も日々、買い物をし、インターネットやSNSから情報を得ながら商品やサービスを選ぶ、一人の消費者です。
 消費者教育支援センターと生命保険文化センターでは、2025年7~9月、全国74校の高校1・2年生3,034人を対象に、「高校生の消費生活と生活設計に関するアンケート調査」を実施しました。この調査は2012年から継続して行っており、今回で4回目となります。また、調査協力校のうち10校の先生方に、高校生の様子や家庭科の授業などについてヒアリングを行いました。
 これらの調査から見えてきたのは、お金や社会の課題に関心を持ちながらも、その思いが必ずしも日々のお金の管理や行動にはつながっていない高校生の姿です。


お金への関心と日々の管理

 まず注目したいのは、お金に対する関心の高さです。「何をするにもお金が大切だと思う」は9割を超え、「お金は働いてコツコツ貯めるものだと思う」も9割台半ばにのぼりました。
 一方、普段のお金の管理方法は、「特に管理はしていない」が4割台半ばで最も多くなりました。お金は大切だと考えていても、収支の記録や使い道の計画には、なかなか結びついていないようです。
 先生方へのヒアリングでも、キャッシュレス決済が高校生に定着し、お小遣いをキャッシュレスで受け取る生徒も増えている一方、現金に比べてお金を使っている感覚が薄く、管理が甘くなりやすいのではないかという声が聞かれました。
 また、「投資や資産運用などでお金を増やしたいと思う」は4割台半ばで、男子は6割弱、女子は3割強と大きな差が見られました。資産形成への関心とともに、日々のお金を管理し、利益だけでなくリスクにも目を向ける力を身につけることが、トラブルを避けるうえでも大切です。

社会課題への関心と消費行動

 社会課題への意識にも、関心と行動の間のギャップが表れています。「気候変動は高校生の将来にとって切実な問題だと思う」は8割弱で、自分たちの将来に関わる問題として受け止めている様子がうかがえます。
 一方、4割強が「高校生が社会課題や環境問題の解決のために行動しても、何も変わらないと思う」と答えました。買い物を商品や企業への「お金の投票」と捉える高校生も半数に届かず、日々の選択と社会とのつながりは、十分に実感されていないのかもしれません。
 その一方で、学校では、社会課題への関心を身近な行動につなげる実践も行われています。ヒアリングでは、フードドライブ(余った食品を集め、必要とする人や団体に届ける活動)やアップサイクル(不要になったものに新たな価値を加えて再利用する取組)に取り組んだり、自分ができているエシカル消費、できていないエシカル消費を調べて発表したりする授業が紹介されました。知識を学ぶだけでなく、実際に考え、選び、行動する経験が、「自分にもできることがある」という実感につながっていくのではないでしょうか。

18歳成年に感じる不安と期待

 18歳で成年になることへの意識にも、複雑な思いが表れています。「プレッシャーに感じる」は男女とも4割前後で、2021年度調査から15ポイント以上増えました。「なんとなく面倒に感じる」も3割台半ばにのぼりました。
 一方、「大人の仲間入りができてうれしい」も前回から10ポイント以上増え、2割台半ばとなりました。不安や戸惑いとともに、新しい権利や可能性への期待も抱いているのでしょう。
 先生方からは、18歳で何ができるのかを十分に理解していない生徒や、1年生で学んでも3年生になる頃には忘れてしまう生徒もいるという声が聞かれました。18歳になると、保護者の同意がなくても契約ができます。責任の重さだけでなく、契約について理解し、困ったときには周囲や相談窓口に助けを求めることも伝えていく必要がありそうです。