農林水産省と環境省、消費者庁による「あふの環(わ)2030プロジェクト」は1月19日、食と農林水産業に関わるサステナブルな取り組み動画を表彰する「サステナアワード2025伝えたい日本のサステナブル」の受賞作品を公表し、2月2日に授賞式を行った。農林水産大臣賞は、野村不動産ホールディングス㈱(東京都)による、奥多摩町での森づくりを紹介した「『森を、つなぐ』東京プロジェクト」が受賞した。環境大臣賞には、農業生産法人春夏秋冬(神奈川県)の、地域の農家や食品生産現場からの廃棄物を活用した養鶏運営「鶏からはじまる地域の循環」が、消費者庁長官賞には、㈱だいずデイズ(兵庫県)の、有機JAS認定取得を目指す「転換期間中」の有機大豆を適正価格で買い取ることで、有機農業の拡大を支援する「有機農業拡大のための転換期間中大豆の活用」が選出された。(原田恵理)
サステナアワードは、▽とめよう温暖化▽まもろういきもの▽まもろう水▽へらそうごみ▽みんなで支え合おう▽まもろう土に関するもの-をテーマとした最長3分30秒以内の動画を募集したもので、8月1日~11月9日の期間に56作品の応募があった。長野県立大学大学院ソーシャルイノベーション研究科教授の秋葉芳江氏ら4人が審査に当たった。
農水大臣賞を受賞した野村不動産ホールディングスは、事業活動を通じて持続可能な社会を実現しようと、2022年に奥多摩町の森林の地上権を取得し、「つなぐ森」と名付けて「『森を、つなぐ』東京プロジェクト」を始動した。気候変動や森林荒廃などの課題解決に向けた森林経営を請け負い、伐採から製材、木材活用までを一貫して行う独自の木材サプライチェーンを構築。サプライチェーンの活性化を図ることで、新しい経済循環を創出するとともに、森林サイクルの促進によるCO2吸収量の増加や森林の多面的な機能回復に貢献している。木材は自社グループの建材としての利用だけでなく、未利用材を家具、枝葉で製品開発するなど、1本の木を無駄なく活用。建材や製品に貼られた2次元コードを読み取るとトレーサビリティも確認でき、ユーザーが森林について考えるきっかけを創出している。
生物多様性の回復に向けては、▽健全な生態系ピラミッドの維持▽重要種の保全▽林業と生物多様性の共生▽生態系サービスの活用-の4つのゴールを策定。独自の生態系管理計画を策定して、「つなぐ森」をゾーニングし、有識者会議を開催してモニタリングを進めている。審査員からは、▽部分的にでも他者に模倣されることで森林産業の投資につながる▽狙いと行動が一致している-などの点が高く評価された。
環境大臣賞を受賞した春夏秋冬は、小田原市の山間部で養鶏と農業を営む檀上貴史さん・智子さん夫妻による農業生産法人。過疎化が進む地域で養鶏を中心とした野菜と果樹の栽培に取り組む。夫妻は養鶏の特徴に①地域循環型②少数飼育少量生産③社会課題解決型-の3つを掲げる。
①は、地域の未利用資源を飼料や鶏舎の敷料に活用。近郊の酒蔵や食品加工会社に協力を得て、製造過程で発生する米ぬかや小豆の搾りかすなどの未利用資源を飼料にしている。地域の耕作放棄地を購入して管理を担い、農薬や化学肥料を使わない野菜や果物を栽培して、きれいにできたものは販売し、残りは鶏の餌にしている。②は、鶏の飼育数を1000羽にとどめ、過剰な生産は行わない。役目を終えた鶏は屠畜してペットフードに加工して販売。その収益は保護犬活動に寄付している。③は、鶏ふん堆肥でバイオ炭を製造。それらを還元した農地で蜜源植物を育てることで、鶏の飼料を生産しながら蜜蜂を筆頭とした生物多様性の確保にも貢献している。審査員からは、「循環を回し続ける行動を地道に体現している点が環境大臣賞にふさわしい」と評価された。
消費者庁長官賞を受賞しただいずデイズは、有機蒸し大豆を中心に、有機豆や雑穀を使用した商品を製造販売する企業。「有機農業を広げ、もっと身近なものにしたい」が同社のミッションだが、有機農業への変更に必要となる2年の転換期間が農家にとっての大きな障壁となっている。「転換期間中原料の専用商品を作ることが有機拡大の支援になる」と考えた同社は、転換期間中の大豆を農家から高値で買い取り、「転換期間蒸し大豆」として2022年に商品化。発売からの3年間で、累計販売実績は30万パックに及ぶ。
さらに同社は、有機への転換に挑戦する農家への理解を広めようと、消費者や小売店、生協などに協賛や支援を呼びかけている。審査では「消費者が商品を選ぶことで初めて成立する仕組み」と高い評価を得た。