ペットの契約不適合責任、販売業者の免責条項を認めず。高裁、犬猫は「不代替物」と判断。買主の解除権などは認める

 適格消費者団体の特定非営利活動法人消費者支援かながわが、ペット販売業者のワンニャンハウス株式会社(東京都)に対し、契約条項の使用差止めを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は7月23日、同社の控訴を棄却した。犬猫は個体ごとに特徴が異なり、同種・同質・同量の物に代えることができない「不代替物」に当たると判断した。一方、不代替物であっても、通常備えるべき品質を欠く場合には契約不適合に当たり、買主は民法上の追完請求や代金減額請求、解除、損害賠償請求などを行使できるとした。消費者庁が10月16日、公表した。


 同団体は、同社のペット売買契約書にある、一定の保証条件に該当する場合を除いて返品や交換などに応じず、契約書に記載した内容以外は一切責任を負わないとする条項などについて、消費者契約法に違反するとして使用差止めを求めた。
 横浜地裁は2025年12月3日、同団体の請求を全面的に認めた。同地裁は、販売されるペットを代替物と捉え、契約不適合があった場合には、買主が民法に基づき代替物の引渡しや修補(治療)などを求められることを前提に判断した。
 これに対し同社は控訴審で、ペットは個体ごとに性質が異なる特定物であり、不代替物に当たると主張した。ペットの売買では、同種・同質という基準を設けることはできず、特定のペットを引き渡した時点で売主の履行は完了するため、契約不適合責任は生じないとする主張を展開した。
 また、動物愛護管理法により買主にはペットを飼養する責務があることから、契約不適合を理由とする解除を認めれば、買主がその責務を免れることになるとも主張した。さらに、事業者に故意または重大な過失がない場合には、損害賠償責任を制限する契約条項は無効にならないとの解釈を示した。


 東京高裁は、犬猫の価格帯が1匹当たり30万円前後と比較的高額であることや、性別、年齢、体重、血統、毛色、模様、部位の形状などに個体差があり、購入者が個々の特徴を考慮して選んでいることなどを踏まえ、同社が販売するペットは不代替物に当たると判断した。ペットは家庭で家族の一員のように飼育され、名前を付けられることも多く、購入者が個体ごとの微細な特徴を考慮して選別している実情も挙げた。横浜地裁が犬や猫を代替物と判断したのに対し、東京高裁は不代替物と判断した。
 一方で、不代替物であっても、取引上の社会通念に照らして通常備えるべき品質を欠いていれば、契約不適合に当たるとした。購入価格は、購入後の比較的短期間で病死したり、飼育上重大な支障を来す障害が発見されたりしないことを前提に設定され、消費者もそのことを前提に購入していると指摘した。買主は、民法562条の追完請求権、563条の代金減額請求権、564条の損害賠償請求権や解除権を行使できるとした。ただし、不代替物であるため、別のペットの引渡しを求めることはできないとした。
 動物愛護管理法上の飼養の責務については、購入したペットに契約不適合があれば、買主が民法上の解除権などを行使できるのは当然と指摘した。飼養の責務は、売買契約によって買主の所有となったペットについて成立するものだとして、同社の主張を退けた。
 また、同社は、事業者に故意または重大な過失がない場合には、損害賠償責任を制限する条項は有効だと主張した。これに対し高裁は、同社の解釈は、事業者の債務不履行や不法行為による損害賠償責任を一部免除する条項について、重大な過失を除く過失の場合にのみ適用されることを明確にしていないものを無効とする消費者契約法8条3項の趣旨に反すると判断。同社の主張を退けた。


 高裁は控訴を棄却し、同団体の請求を認めた原判決の結論を維持した。同社は8月4日、上告受理の申立てを行った。消費者庁によると、同社から契約条項の改善措置を講じたとの報告はない。

訴状で問題とされたペット売買契約の条項

※消費者庁資料 別紙「契約条項目録」より
1 ①当店では以下のA.B.Cのペット保証を行っております。
 A病死の場合
 適切なワクチン接種を実施していたのにも関わらす、ご講入日より1年以内に病死した場合は同価格程度の犬(猫)と代替保証いたします。(ただし、獣医師の診断書が必要です。)
 B先天性障害の場合
 ご購入日より3ヶ月以内に(期間制限)飼育上重大な支障をきたす先天性障害があった場合、獣医師の診断書に基づき同価格程度同価格程度(原文ママ)の犬(猫)と代替保証、又は購入価格の50%を限度に治療費を負担いたします。
 C門脈シャント、猫伝染性腹膜炎(FIP)の場合
 ご購人日より3ヶ月以内に門脈シャント、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発病があった場合、獣医師の診断書に基づき同価格程度の犬(猫)と代替保証、又は購入価格の50%を限度に治療費を負担いたします。

2 ③下記の事項につきましては保証の適用ではありません。
  6.獣医師が作成した、明らかに当店が起因となる疾病と証明した診断書ならびに治療明細書の提出がない場合
  7.診断書代金・飼育費・用品代・交通費・人件費・美容代・ワクチン代・埋葬費等の諸経費
  10.犬(猫)の病気が人や他のペットに伝染した場合に生じた治療費などの損害の賠償

3 ⑩保証が適用される以外は、お買い上げの犬(猫)の返品、交換、引き取りはいたしません。なお、保証の適用があっても、返品、返金はいたしません。

4 当店が負える責任は契約書記載のものであり、それ以外は一切責任を負いません。

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