アゴダの利用規約、損害賠償や予約キャンセルの条項を修正。埼玉なくす会、差止請求訴訟で和解海外事業者との交渉・訴訟に時間

 国内外の宿泊施設や航空券などを予約できるインターネット上のプラットフォーム「アゴダ」の利用規約をめぐり、適格消費者団体の埼玉消費者被害をなくす会と、運営会社のAgoda Company Pte. Ltd.(以下、アゴダ社)、Agoda International Japan株式会社との間で、2026年7月16日に裁判上の和解が成立した。問題となったのは、事業者の損害賠償責任を免除・制限する条項や、予約の拒否・キャンセルなどに関する条項。和解により、故意・重過失がある場合の免責・責任制限を適用しないことや、予約を拒否・キャンセルできる事由の具体化など、利用規約が修正された。


 同会がアゴダ社に問い合わせるきっかけとなったのは、同サイトを通じて宿泊予約をしたものの、予約がうまくできておらず、返金やその後の対応も十分に受けられなかったという消費者からの情報提供だった。
 同会は2020年7月、アゴダ社に対し、関連会社を通じて、サービスの内容や決済方法などについて問い合わせた。2021年6月には、利用規約のうち、主にアゴダ社の責任を制限・免除する条項の意味や解釈について問い合わせた。アゴダ社からはそれぞれ、2020年9月と2022年6月に回答があった。2022年11月には、利用規約の修正を求める申入書を送付し、回答を得た。
 2023年7月7日付で、消費者契約法に基づき差止請求書を送付した。アゴダ社側からは、利用規約の変更には応じないとの回答があった。その後の利用規約でも、差止請求の対象とした条項と同様の条項が使用されていたため、同会は同年12月6日、Agoda Company Pte. Ltd.とAgoda International Japan株式会社を相手取り、さいたま地裁に差止請求訴訟を提起した。


 提訴では、消費者契約法第8条や第10条に違反するおそれがあるとして、利用規約の複数の条項を問題とした。
 損害賠償責任に関する条項では、アゴダ側に故意や重大な過失がある場合でも、責任が免除・制限される可能性がある内容となっていた。和解による修正では、故意・重過失がある場合には免責・責任制限を適用しないことを明確にした。
 予約に関する条項では、アゴダ側が理由を示さずに予約リクエストを拒否したり、確定した予約をキャンセルしたりできる内容となっていた。修正後は、規約違反、詐欺や悪用、システム保守、宿泊施設側の事情など、予約の拒否・キャンセルが認められる事由を具体化した。
 過大請求や誤請求に関する条項では、消費者が返金を「可能な限り早く」申し立てることを求めていた。申し立てが「不当に遅れて」行われた場合には、請求が無効となり得る内容だったが、修正後はこうした文言が削除され、誤りのある請求について申し立てができることが明確化された。
 消費者がアゴダ側に損害を与えた場合などに負う補償義務についても、従来の規約は、消費者に故意や過失がある場合に限らず、幅広い責任を負わせる内容だった。修正後は、違法・不適切・不正なアクセスや使用などに起因する場合を中心に、補償義務の範囲を整理、限定した。


 同会は、和解後の利用規約について、問題となった条項が改善されていることを確認している。

2023年12月6日、アゴダの運営会社を提訴した後の記者会見に臨む、埼玉消費者被害をなくす会の宮野大翔弁護士(左)と長田淳弁護士(中央)(写真提供:埼玉消費者被害をなくす会)

本社が海外、提訴から第1回口頭弁論まで1年9カ月

 アゴダ社の本社はシンガポールにあるが、日本における外国法人の登記をしておらず、日本国内に同社の代理権限を有する者も設置されていなかった。そのため、訴状は地裁から日本の最高裁判所に送られ、さらにシンガポールの中央当局を通じてアゴダ本社に送達される流れとなった。2023年12月6日の提訴から、第1回口頭弁論期日の2025年9月25日まで、1年9カ月を要した。
 同会によると、アゴダ社の場合、法律上、日本国内に代理人や代表者を置く必要がある。国内に本社がある一般的な企業では、提訴から第1回口頭弁論まで約1カ月半で進むという。
 海外事業者とのやり取りでは、英語への翻訳も負担となった。複数の代理人弁護士が翻訳を分担して対応したという。
 今回の訴訟では、海外に本社を置く事業者に対して法的措置を取る難しさが浮き彫りになった。同会が、海外本社と直接やり取りしながら差止請求訴訟を進めたのは初めてだった。

宿泊予約と航空券で異なる契約相手

 差止請求訴訟は和解となり、利用規約は改善されたが、同会は、宿泊予約と航空券予約で、契約相手となる法人が異なる点も問題視している。同会によると、アゴダの宿泊予約では、日本法人と契約する形に変わった。一方、航空券の予約では、シンガポールの本社が契約相手になるとの説明があったという。
 海外事業者との取引では、利用規約の内容に加え、契約相手となる法人や、トラブル時に国内で迅速に対応・補償を受けられる窓口があるかどうかも重要だ。
 同会は、海外のオンラインプラットフォーム事業者について、日本の消費者契約法の趣旨に沿った明確な利用規約と、トラブル時に迅速に対応できる窓口の整備が求められるとしている。

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