引っ越しに関するトラブルが増加傾向にある。PIO‐NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)によれば、2021年度に1869件だった相談件数が、2022年度には1958件に増加。2023年度には2128件、2024年度には2345件と推移し、2025年度は11月30日時点で1515件となっていて、前年度の同時期(1384件)と比較して131件多いことから、今後も増加することが懸念される。相談内容をみると、「引っ越し事業者によって壁や家具に傷をつけられた」といったものや「荷物の紛失」などのほか、オンラインでの見積もりと実際の荷物量との差異によって生じたトラブルもあるという。相談が寄せられた受け付け年月をみると、新生活を迎える3月~4月に増加する傾向があることから、国民生活センターは2月4日、引っ越しトラブルの特徴などを公表し、注意を呼びかけた。(原田恵理)
昨年7月の30歳代女性からの相談事例は、賃貸マンションからの引っ越しの際、事前に引っ越し事業者に「冷蔵庫等の大きなものは掃き出し窓から出してほしい」と頼んでいたのにもかかわらず、玄関から搬出した。引っ越し当日はバタバタしていて気が付かなかったが、確認のために賃貸マンションに行くと、廊下や階段のクロス、床やドアに傷が多数で来ていて、大家にも「これはひどい」と言われるほどだった。引っ越し事業者の担当者に申し出ると、「引っ越しで傷ができたとは限らない。初めから傷があったのでは?」と言われた。どう対応すればいいか、といったものだった。
見積もり時と異なる請求があったケースもある。
昨年7月の20歳代男性の場合は、引っ越し予定日の1カ月前にA社とB社に見積もりを依頼した。A社のほうが安かったので、A社と契約をした。エアコンの脱着も依頼したところ、「転居先でのエアコンの配管に追加料金がかかるかもしれない」と言われて承諾した。2週間後、エアコン事業者から連絡があり、エアコンの取り外し日程を聞かれた。「何のことか」と聞くと、エアコンの引っ越し当日脱着は約1万円の追加料金がかかる」と初めて聞かされた。引っ越し3日前にA社から直接電話があり、エアコンの追加料金について尋ねたところ、見積もり時に説明していると言われ、「いやならば解約すればよい」と言われた。いまから別の引っ越し事業者を探すこともできないため、説明のなかった転居先の高所作業費も含めた追加料金も支払った。納得できず返金を求めたが、「支払った時点で承諾している」と言われてしまった、といったものだった。
オンライン見積もりで生じたトラブルとしては、ネットの比較サイトで価格の安かった引っ越し事業者に依頼したという30歳代の女性のケースがある(2025年8月)。
荷物の数を事前に申告したが、訪問での見積もりはなかった。引っ越し事業者から「2㌧トラックで入るのでは」と言われたが、万が一を考えてもう少し大きいタイプを指定した。引っ越し当日、担当者が来て作業を開始したものの、荷物がトラックに乗りきらなかった。引っ越し事業者からは「これ以上荷物が入らない。いまから別の引っ越し事業者を紹介する」と言われた。荷物が全部入らないとは想定していなかったため驚いたが、作業終了の書類に署名してしまった。結局残った荷物は自分で運んだが納得できない、といったものだった。
このほか、見積もりのための訪問の際、段ボールを置いて行った事業者がいて、その事業者と契約しなかったところ、段ボールを消費者側の費用負担で返送するように言われた(2025年9月、40歳代女性)、というトラブルもある。
見積もりは、引っ越し事業者が訪問して実際の荷物や搬入経路を確認して行うことが一般的だが、近年はオンラインや電話、メールで消費者が荷物量等を自己申告して行う場合もある。自己申告を誤ったり事業者との間に誤解が生じると、当日に荷物が積みきれなかったり、搬出ができないといったトラブルにつながる恐れがある。
また、引っ越しの後にキズや故障に気が付いても、それが引っ越し作業によるものかどうかを特定することは難しい。写真や動画で記録を取っておくことや、問題に気が付いたらできるだけ早く引っ越し事業者に伝えることも重要だ。
引っ越し事業者と契約する際には、見積書や約款等の書類をよく読み、疑問点は必ず確認しよう。契約前に段ボールなどの資材提供を受ける際は、契約に至らなかった際の扱いについても確認してほしい。
不安に感じたら、消費者ホットライン「188」に相談しよう。