「農林水産省寄稿:前編」
食育基本法が約20年ぶりに改正され、食料安全保障の視点が新たに盛り込まれました。前編では、食育基本法の改正経緯と、改正の4つのポイントのうち「①食料安全保障の確保にもつながる食育へ」「②学校での『農林漁業教育』を新たに規定」の2項目について紹介します。
今年(2026年)の5月、法制定から約20年が経過し、食や農を取り巻く環境が大きく変わったことや、農政の憲法とも言われている「食料・農業・農村基本法」の改正に対応するため、食育基本法が改正されました。
一昨年(2024年)の「食料・農業・農村基本法」の改正で、食料安全保障の確保が基本理念の柱として定められ、また、消費者の役割として、農業等への理解を深めるとともに、消費に際して食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることが明確にされました。
さらには、食料の合理的な価格形成には、持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない旨が、新たに基本理念に位置付けられるとともに、基本的施策として、価格形成における費用の考慮のための関係者の理解増進も盛り込まれました。そしてこれを受けて、昨年(2025年)、「食料システム法」が成立し、コストに関する具体的な根拠とともに取引条件に関する協議の申出があった場合には誠実に協議に応じる旨の努力義務が規定されるとともに、米や野菜などの指定飲食料品等については、国の認定を受けた民間団体が、生産から販売に至る各段階のコストを「見える化」した「コスト指標」を作成できることとされました。これらにより、消費者の皆様のご理解をいただきながら、持続的な供給に要する費用を考慮した取引を促進することとしております。
また、大人の世代では、食に関する意識の低下、食に対してタイパ・コスパを重視する傾向も、ますます進んでおり、栄養バランスの乱れや食習慣の偏りといった課題が深刻化しているほか、食卓と農林水産業の生産現場の距離は遠くなり、生産者と消費者の関係性が希薄化していると考えられる状況です。
こうしたことを受けて、消費者が食と農への理解を一層深め、国産品、地場産品の農産物を進んで選択をしたり、継続して農業を続けていくことが可能なコストを負担したりといった具体的な行動変容につなげていくため、これまで実施されてきた食育の取組の検証に基づき、食育の実効性を高め、国民運動としてあまねく全国においてあらゆる世代の人々に対し十分な水準で食育が展開されるようにするべく、この度、食育基本法の改正がなされた、という経緯です。
改正の大きなポイントは4つあります。
1つ目が、食料安全保障の確保です。食育が食料安全保障の確保にも資することを目的規定や基本理念に追加し、食べ物がどのように作られ、どのように流通しているのか、各段階でどのくらいのコストがかかっており、表示されている値段になっているのかを消費者の方々に知っていただき、食料の合理的な価格の形成について理解を深めることも食育の基本理念ということが明示されました。
農林水産省では「売る人にも、買う人にも、育てる人にも。フェアでいい値を考える。」をコンセプトに、関係者の理解醸成と行動変容の促進を図る「フェアプライスプロジェクト」を展開しています。これまで、値付け体験を通じて食品の供給現場の実態等について考えるきっかけを提供する消費者参加型イベントの開催や、イベントを教材にした出前授業等の実施に取り組んできました。今年度は、これらの取組の全国展開を進めてまいります。製作したコンテンツは、皆様のイベント等での活用も可能ですので、「フェアプライス」の考えの普及に一緒に取り組んでいただければ幸いです。
また、農林水産省では、消費者の皆様の環境に配慮した農産物・食品の選択やその理解に向け、生産段階における生産者の温室効果ガス削減や生物多様性保全への貢献といった環境負荷低減の取組を「見える化」し、星の数で分かりやすくラベル(愛称:みえるらべる)表示する取組を進めています。対象品目は米、野菜、果実等の24品目です。「みえるらべる」の表示は、小売店を始め、外食、食堂、教育機関等の多様な場所で広がっており、全ての都道府県でみえるらべる商品を通年購入できる環境づくりを目指しています。