「AI技術の利用と消費者問題」で。消費者委員会、専門調査会を新設

 内閣府消費者委員会は1月27日、人工知能(AI)技術の急速な進展と社会実装の拡大を踏まえ、「人工知能(AI)技術の利用と消費者問題に関する専門調査会」の設置を決定した。AIが日常生活に浸透する中、国内のAI利用の実態調査や、海外法制の調査などを踏まえ、消費者との関わりで既に生じている問題や今後生じ得る課題を整理し、必要な対応策を検討する。(相川優子)

AIが自律的な意思決定を阻害する場合。それ自体を消費者問題として位置づけ

 委員会では、AIが消費者の意思決定プロセスに影響を与え得る点を重視。仮にAIの活用が消費者の自律的な意思決定を阻害する場合、それ自体を消費者被害・消費者問題として捉え、検討対象に含める必要があるとの認識が示された。
 委員からは、「意思決定への介入・操作といった問題は、他の消費者問題に比べ、消費者自身が実感しにくい面がある」との指摘があった。「日本は議論が海外より遅れている可能性がある」として、海外の立法や立法事実の調査、実態調査によるリスクの可視化の必要性も挙げられた。
 このほか、「ターゲティングや生成AIを用いたプロモーションなど、意思決定への影響を消費者問題としてどう評価するか(ポジティブ・ネガティブ両面)や、お客様相談窓口(チャット等)など、契約締結後の紛争解決や事業者とのコミュニケーションにAIが導入される局面も重要な論点になり得る」といった意見が出た。
 さらに「AI活用の進展により利便性向上やパーソナライズなどの利点が生まれる一方、ディープフェイクや音声合成による詐欺、消費者の主体性を阻害するリスクなども懸念される」、「デジタル空間での消費者被害は個人の注意だけでは防ぎにくく、消費者教育の内容自体もアップデートが求められる」などの指摘もあった。


新たな消費者問題具体例に。予約代行・価格・フェイクなど

 これまでに本会議で実施された有識者ヒアリングでは、AIが取引や情報環境を変えることで、利便性と同時に新たな消費者問題が生まれ得るとして複数の事例が紹介されている。
音声対話AIが飲食店の電話予約を代行するサービスは、効率化やアクセシビリティ向上が期待できる一方で、店舗側に情報が正確に伝わらず、アプリ上は予約完了と表示されているのに当日断られるといったトラブルが起こり得る。
 また、利用者利益の最大化を目指すAIエージェントが多数のホテルを仮予約し、不要分をキャンセルする行為が広がった場合、宿泊事業者を妨害する悪意はなくても、結果として業界の運用を麻痺してさせ得る。
 さらに、ホテル側の価格自動更新システムがアクセス急増を「本当の需要」と誤認して価格を引き上げ、消費者側AIが高値回避でキャンセルと再検索を繰り返すことで、短期間に価格が乱高下するおそれもあるという。
 加えて、有名人のフェイク動画が容易に作成できることで、詐欺・誤認誘導・風評被害の土台が拡大し、肖像権・著作権侵害が広がりやすくなる点も論点として挙げられた。
 このほか、対話型AIへの「依存」やメンタルヘルス問題も指摘されている。
 専門調査会は、小塚荘一郎・学習院大学法学部教授を座長に、消費者法、民法、認知科学、情報工学、心理学、AI、LLM(大規模言語モデル)の専門家ら10人で組織される。

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