特殊詐欺や悪質商法による消費者被害が深刻化する中、消費者庁新未来創造戦略本部国際消費者政策研究センター(ICPRC)は7月30日、「消費者被害(特殊詐欺・悪質商法)における脆弱性の実態調査」のプログレッシブ・レポートを公表した。全国2万5,600人を対象に実施した調査から、消費者被害は単なる知識不足や高齢であることだけでは説明できず、健康状態や心理的負担、孤立感、相談しやすい環境など複数の要因が重なって発生する可能性が浮かび上がった。
調査は2026年1~2月、全国47都道府県の20歳以上を対象にインターネットで実施。性別や年代、地域人口を考慮して回答を回収し、生活状況や被害経験、心理社会的特性、相談相手など幅広い項目を分析した。研究は今後の詳細分析に向けた中間報告という位置付けで、現時点では記述統計を中心に結果をまとめられている。

調査では、消費者被害を経験した人は5.8%だった一方、「被害に遭いそうになった」経験者は10.8%と約2倍に上る。実際の被害に至らなくても、多くの消費者が詐欺や悪質商法に接触している実態が明らかになった。
被害内容では、架空料金請求詐欺が最も多く、金融商品詐欺や悪質商法が続く。また、オレオレ詐欺では、犯人が警察職員を名乗るケースが被害者で63.3%、回避者でも52.3%を占め、「ニセ警察詐欺」が被害拡大の一因となっていることがうかがえる。
接触経路にも大きな変化がみられた。携帯電話やスマートフォン、SMS、メール、SNSが被害・回避の双方で最も多く、デジタル空間が詐欺の主要な入口となっている。一方で、固定電話や居宅訪問をきっかけとするケースも一定数確認され、従来型の手口とデジタル型が併存する状況も浮き彫りになった。
注目されるのは、被害の背景にある心理社会的要因。回答者の多くは自身の健康状態を中程度以上と評価していたものの、疲労感や睡眠の問題、軽度から中程度の認知機能の困難を自覚する人も少なくなかった。さらに、孤独感を感じる人も一定割合存在し、「仲間付き合いがない」と感じる回答は6割を超えた。
一方で、「自分は詐欺に遭わない」という自信を持つ人が7割を超えたほか、「強い口調で言われるとおびえてしまう」「お金の相談をすると信用を失いそうで不安」といった回答も目立った。研究では、こうした心理的特徴が被害場面での判断や相談行動を妨げる可能性を指摘している。
相談相手については、配偶者や家族を挙げる人が多かったものの、被害や被害未遂を経験しても約3割が「誰にも話していない」と回答。さらに、配偶者や子どもなど「相談できる相手がいない」とする層も少なくなく、家族だけに依存した見守り体制には限界があることも示された。
報告書は、消費者被害対策として、デジタル接触への対応強化に加え、公的機関や専門家への相談導線の整備、地域での見守り体制の充実、権威を装う手口への具体的な啓発など、多層的な対策の必要性を提言している。今後は年齢や居住形態、心理社会的要因などとの関連を分析し、被害防止に資する実証的エビデンス(根拠)を構築していく方針だ。