2月8日に投開票された2026衆院選は、高市早苗首相が率いる自民党の歴史的圧勝で終わった。自民党の衆院選公約2026「自民党政策BANK」には、消費生活センターの機能強化や見守り活動の活性化などの地方消費者行政の充実・強化や、消費者法制度のあり方の見直しに取り組むことが明記されている。黄川田仁志消費者相は2月10日の大臣会見で、今後の消費者政策を問う本紙の質問に答え、「地方消費者行政は国の消費者行政の基盤」との認識を示し、「交付金の有効な活用を促し、地方消費者行政の充実強化にしっかり取り組んでいく」方針を示した。(相川優子)

同日の大臣会見で、自民党大勝の受け止めを問われた黄川田消費者相は「政府として答えることは控えたい」と述べ、あくまで大臣の立場での会見と回答には慎重な姿勢を示した。
首相からの指示を問う質問には、「特に各大臣への指示はなかった」と説明。一方で、閣僚が全員当選して戻ってきたことに対し、「感謝」「よく戦って帰ってきました」といった労いの言葉を受けたと述べた。
その上で、高市総理は、「特に責任ある積極財政への転換」を選挙で訴えてきたとの認識を示し、自身は、「日本列島を強く豊か」する方針を閣僚として支え、「国民一人一人への幸せにつなげていく役割を担う」と述べた。選挙は国民の声を聞ける場であるとして、「選挙を通じて聞いた国民一人一人の大切な声を今後に反映していきたい」と語った。
長期政権となることが想定される高市政権下で、特に力を入れて達成したい消費者政策については、「まだ決まっていないため、留任を前提に答えることは差し控えたい」としながらも、地方消費者行政に言及した。
地方消費者行政は、「地域住民の消費生活の安全安心の確保に必要不可欠で、相談情報の集約活用により、国の消費者行政の企画立案や執行における基盤となっているおり、その充実強化は重要な課題」との認識を示した。
昨年6月の衆議院消費者問題に関する特別委員会の決議等を踏まえて、地方消費者行政強化交付金の見直しを行うこととし、具体策として、これまでの財政支援の終了による地方消費者行政の後退を回避するための対策を講じている。また、見守り活動の強化、相談員の担い手確保、広域連携による消費者消費生活センターの運営等を支援する新たなメニューを創出していると説明。「本交付金の有効な活用を促すとともに、地方消費者行政の充実強化にしっかりと取り組んでいく」との考えを示した。
自民党の個別施策の公約を盛り込んだ「総合政策集2026J‐ファイル」には、「地方消費者行政の後退を回避するため、交付金の仕組みを見直し、地方への財政支援の充実・強化に取り組むこと」「『待ち』の相談対応から、見守り活動や出前講座等の充実を図り、地域の実情に応じた広域連携、相談員の担い手確保、消費生活相談のデジタル化等を進める」ことが明記されている。
新たな交付金のメニューとして、見守りを支援する消費生活相談員の人件費の2分の1、研修費や啓発費用などは1自治体30万円(広域連携の場合は50万円)を10分の10で、“継続して”補助する仕組みなどが導入された。
これは、「自治事務であるから自治体任せ」から、国も、国の消費者行政に不可欠な基盤として、責任を持ってサポートすることを意味している。
相談員報酬の引き上げや、自治体の相談体制の強化を図ることを目指しているが、その意図や具体的な活用要件の真意が十分伝わっておらず、“二の足”を踏んでいる、活用を逡巡している自治体が少なくない。
2年以内に設置を目指す消費者安全確保地域協議会は、福祉・防犯関連で多くの会議がある中で、既存の会議に上乗せし、高齢者に関わる人たちに、高齢者が騙されやすい消費者トラブルの情報を伝え、日々の活動の中で気になることがあればセンターにつないでもらう仕組みを求めているが、福祉関係者が多忙で会議の規定を変更してもらうための交渉に苦労している現状がある。厚労省から担当部門へ通知を出すことを求める声が出ている。
消費生活相談員の報酬は、会計年度任用職員に移行し、ボーナスや期末勤勉手当が出ることで、一定程度引き上がってきているが、自治体間の格差が大きい。勤務日数や勤務時間を調整して、ボーナス・期末勤勉手当の対象外にする、あるいはフルタイムにせず退職金の対象外としている自治体も少なくない。
俸給表の格付けは会計年度任用職員の最上位にある自治体を含め、会計年度職員として横並びの規定があるため、これ以上は消費者行政担当部局では如何ともし難いという声も目立つ。この交付金を有効に活用してもらうために、消費者庁ができることは何か、さらに検討してほしい。
何より、相談員が確保できない最大の課題は、身分の問題だ。
自治体の消費生活相談員のほとんどが2020年度に会計年度任用職員に移行し、原則1年契約で、毎年契約が更新されている。これまで減っていた公募による競争試験を3年あるいは5年で行うところが増えた。2024年度は34.7%(都道府県は52.7%)に上った。
2025年度は、28.9%(同46.8%)に若干改善されてはいるが、まさにこの2月に公募による競争試験の対象になり、一般公募者と同様の書類審査や面接試験を受け、合否の通知を待っている相談員も少なくない。10年、あるいは15年以上の経験がある相談員も、例外なく対象になっている。
「身分が不安定で非常に不安がある」
「この身分である限り、若い人が生涯の仕事として選ぶことはない」
「先が読めない不安定な身分は、この職をまっとうしていこうという気持ちを阻害する」
「報酬も重要だが、相談員を確保するには身分の問題をなんとかしなければどうしようもない」
「消費者庁創設時から相談対応をしてきたが、若い人の応募があれば不利。経験が評価されない」
「相談現場の職員が数年ごとの競争試験の試験管になるため、言いたいことが言いにくい」
「現実に不合格になれば相談者の引き継ぎや事業者とのあっせん交渉に支障が出る」などの声が現場の相談員から噴出している。
自治体職員から「競争試験は、不適格な相談員を落とすことができる仕組み」との意見もあるが、通常の正規職員ではありえない。
「会計年度任用職員制度の導入に向けた事務処理マニュアル第二版(2025年8月)」では、Q&A問6‐2で「必ずしも公募を実施する必要があるか」との質問に「再度任用が想定される場合の能力実証および募集についても各地方公共団体において、平等取り扱いの原則および成績主義を踏まえ、地域の実情に当に応じつつ適切に対応されたい」とされている。
「客観的な能力の実証の一要素として、前の任期における実務勤務実績を考慮して選考を行ない、その結果、再度の任用をすることは可能である」とも記載されている。
自治体内の労働組合の交渉で競争試験が廃止されたところも出てきている。
競争試験が廃止されても、報酬が正規職員並みに上がっていくわけではなく、退職金があるわけでもなく、キャリアアップが図れるわけでもない。新人とほとんど同額の報酬でずっと働く仕事は、若い人が選ぶ仕事にはなりえないとの意見も聞かれた。
公募による競争試験に代表される相談員の身分の問題は、人材確保へ向け解決すべき最大の課題だ。
この相談員の身分の問題をどう改善していくのか。この問題は残された最大の課題のままだ。今後の検討が待たれる。