自宅「押し買い」防止へ規制強化。リースバック、国交省が新指針施行。相談5年で約10倍、契約者の7割が70歳以上

 自宅を売却した後も家賃を払って住み続ける「住宅リースバック」をめぐり、高齢者が強引な勧誘で自宅を安く売却させられたり、契約後に退去を迫られたりするトラブルが相次いでいる。国土交通省は10月、宅地建物取引業法に基づく新たなガイドライン(指針)の運用を開始し、悪質な不動産業者への監督を強化している。国民生活センターによると、2024年度の相談件数は239件で、2019年度の約10倍に増加。契約当事者の約7割を70歳以上が占めている。住み慣れた自宅を失いかねない深刻な被害を防ぐため、規制強化が図られている。


 リースバックは、自宅を不動産業者などに売却してまとまった資金を得る一方で、買い主と賃貸借契約を結び、家賃を支払って同じ住宅に住み続ける仕組み。老後の生活資金や借金返済のために利用されることがあるが、売却と同時に所有権を失ってしまう。契約内容によっては家賃の値上げや賃貸借契約の終了で退去を求められる可能性もある。


 国民生活センターが10月1日に公表した相談事例では、80代の消費者が不動産業者から朝から夜遅くまで長時間勧誘され、自宅マンションを1200万円で売却する契約を結んだ。後に親族から売却価格が安すぎると指摘され、解約を申し出たところ、手付金50万円の返金と違約金50万円を請求された。相談者は、勧誘時に違約金の説明がなかったと訴えている。
 別の事例では、生活苦から自宅マンションを約1000万円で売却し、月7万円の家賃で住み続けていた70代女性が、約10万円への家賃引き上げを求められた。値上げに応じなければ退去するよう告げられたという。また、200万円で売却した自宅を買い戻そうとした70代男性に、業者が売却額の5倍に当たる1000万円を提示した事例もある。


 こうしたトラブルを受け、国交省は、「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を策定し、10月から施行した。売却を拒否した消費者への勧誘継続や長時間にわたる勧誘(押し買い)、家賃や契約期間などの重要な条件について事実と異なる説明をする行為(事実不告知)などが、宅建業法上で問題になることを明確化した。
 違反行為には、業務停止命令や宅建業免許の取り消しなどの行政処分が科される。新たな法律による規制ではなく、既存の宅建業法の適用関係を整理することで、不動産業者に対する指導・監督の実効性を高める。
 ただ、消費者が不動産業者に自宅を売却する場合、宅建業法のクーリング・オフ制度は適用されない。契約を解除するには手付金の倍額の支払いや高額な違約金が必要になる場合もあり、一度契約すると元に戻すことは簡単ではない。


 国民生活センターは、自宅を売却する意思がなければ勧誘をきっぱり断り、契約を検討する場合も複数の事業者に売却価格を確認するよう呼びかけている。将来にわたり家賃を支払えるか、契約終了後も住み続けられるかなどを十分に検討し、家族や信頼できる人に相談することが重要だとしている。

10月に施行された宅地建物取引業法に基づく新たなガイドラインの概要

続きを読むには会員登録が必要です

ニュース記事の全文をお読みいただくには、会員登録(購読申込)が必要です。