生成AI(人工知能)が買い物や情報収集、相談など日常生活に急速に入り込む中、消費者委員会の「人工知能(AI)技術の利用と消費者問題に関する専門調査会」では、消費者保護の在り方について検討を進めている。専門調査会は2月に初会合を開き、AIの利用実態から消費者の意思決定への影響、偽・誤情報、個人情報、AIへの過度な依存など幅広い問題を議論。9月9日の第9回では、これまでの検討状況を整理するとともに、消費者がAIを適切に利用するための方策について議論を深めた。
専門調査会が重視しているのは、AIによる問題を単なる「誤回答」の危険性だけで捉えない点。生成AIは利用者の質問に応じて文章を作成し、相談相手や助言者のような役割も果たす。今後、商品選択や契約などの意思決定にAIが深く関与すれば、消費者が自覚しないまま判断そのものがAIの影響を受ける可能性がある。
第2回では、AI技術と消費者の意思決定の関係を中心に検討するとともに、生成AI利用者へのアンケート結果を報告。第4回ではその調査結果を踏まえ、偽情報、個人情報・プライバシー、思考力・判断力の低下などに利用者が不安を抱えている実態を整理した。多くの利用者が生成AIを便利だと感じる一方、「完全には信頼できない」と認識している傾向も示された。
特に難しいのが「自律的な意思決定」への影響だ。AIから誤った情報を示されれば問題を認識しやすいが、AIとの継続的なやり取りによって考え方や商品選択が変化した場合、利用者自身が影響を受けたことに気付かない可能性がある。専門調査会では第6、7回にかけて、こうした自律的意思決定の阻害を消費者問題としてどう捉えるかを重点的に検討した。
AIを提供する事業者側の責任も重要な論点となっている。生成AIは回答の仕組みが利用者から見えにくく、入力した個人情報がどう扱われるのか、回答がどの情報を根拠としているのかを消費者自身が完全に確認することは難しい。専門調査会では、消費者が事業者の説明を信頼して利用せざるを得ないという情報格差や、今後AI利用が幅広い層へ拡大した場合、AIへの対応力が十分でない利用者への配慮がさらに重要になるとの問題意識が示された。
一方、AIを危険な技術として一律に遠ざけるのではなく、消費者がメリットを享受しながら適切に利用できる環境をどう整えるかも議論の柱となっている。第5回ではAI時代に消費者の意思決定がどう変わるのかについて有識者や事業者団体から意見を聴取。第8回では「消費者によるAI技術の適切な利活用」が正面から議題となり、消費者教育やAIリテラシーを含めた対応策の検討へ軸足を移した。
9月9日の第9回では、これまでの「検討状況(案)」を整理するとともに、東京大学大学院の矢谷浩司教授からヒアリングを実施し、消費者によるAI技術の適切な利活用について議論した。専門調査会は、2~4月にAI技術の現状と意思決定への影響、4~7月に具体的な消費者問題、8~10月に適切な利活用に向けた制度的課題などを検討し、10~12月に報告書案をまとめるスケジュールを当初から設定している。
生成AIの普及によって消費者問題は、「AIが間違った答えを出す」という段階から、「AIが人の判断や選択にどこまで入り込むのか」という新たな段階に移ってきている。利便性を損なわず、偽情報やプライバシー侵害を防ぎ、AIへの過度な依存によって消費者自身の判断が損なわれない環境をどう構築するか。年末に予定される報告書で、事業者の対応、消費者教育、制度的な対策をどこまで具体化するかが焦点となる。