消費者契約法 「脆弱性」踏まえて抜本見直しへ。解約妨害や高額解約料にも新ルール検討。消費者庁消費者契約法検討会が中間整理

 高齢化やデジタル化などで消費者を取り巻く取引環境が大きく変化する中、消費者庁の「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」は8月31日、第8回会合を開き、消費者契約法の見直しに向けた中間取りまとめ案を議論した。消費者は誰もが年齢や経済状況、置かれた環境などによって適切な判断が難しくなる「脆弱性」を持ち得るとの考え方を制度の基礎に置き、事業者に消費者の判断や契約結果への配慮を促す新たな仕組みを検討する。サブスクリプションなど継続契約の解約妨害や契約更新、解約料を巡るトラブルへの対応も大きな柱となる。


 消費者契約法は、消費者と事業者との情報量や交渉力の格差を背景として2000年に制定された。事業者の不当な勧誘による契約を取り消したり、不当な契約条項を無効としたりする民事ルールが中心だった。だが、高齢化やデジタル技術の進展、人間関係、地域コミュニティーの希薄化などにより、消費者が単独で複雑な取引に向き合う機会が増加。従来想定してきた「情報や判断の機会が与えられれば合理的に判断できる消費者」だけを前提とした制度では十分に対応できないとの問題意識が背景にある。
 中間取りまとめ案で特徴的なのは、「消費者の脆弱性」への対応。年齢や教育水準、経済状況などによるものだけではなく、人は限られた範囲でしか合理的な判断ができないという性質、焦り、不安など置かれた状況によって判断能力が左右されることも脆弱性として捉える。つまり、特定の高齢者や障害者だけを「弱い消費者」と位置付けるのではなく、誰もが状況次第で適切な意思決定が難しくなるとの発想に立つ。
 その対応策として検討されているのが、事業者の「配慮」を促す規定だ。例えば、消費者を焦らせて十分に考える機会を奪うなど、適切な判断が難しい状態に陥らせないことや、すでに判断が難しい状態にある消費者が不適切な判断をしないよう配慮する方向が示された。個別の禁止行為を細かく列挙するだけでは変化の速い取引環境への対応が難しいため、事業者が守るべき行動規範や原則を法律で示し、具体的な対応について行政の指針などを組み合わせる考え方だ。
 さらに、商品やサービスを直接販売する事業者だけでなく、プラットフォーム提供事業者、決済事業者、広告・情報提供者など、消費者取引を取り巻く関係主体の役割も重要になる。行政が指針を策定するとともに、官民協議会を設け、事業者や関係者の知見をルールづくりに反映させる仕組みも検討されている。
 身近な消費者トラブルに直結するのが「解約」を巡る問題。中間取りまとめ案では、継続的な契約関係から消費者が離脱する際のルールとして「解約妨害の禁止」を検討。事業者に合理的な解約方法を提供するよう求めることや、解約方法・条件について適切に情報提供するための規律も論点となっている。契約期間の更新や契約内容の変更、継続契約を結んだ消費者が死亡した場合の連絡手続きについても検討対象に含めた。
 背景には、デジタルサービスやサブスクリプションなど継続型の契約が生活に浸透する一方で、契約は簡単でも解約方法が分かりにくいといった問題がある。中間取りまとめ案は「継続的な契約関係からの離脱一般に関する規律」を独立した論点として位置付け、解約時の消費者保護を強化する方向を示している。
 高額なキャンセル料など「解約料」の問題も重要テーマ。現在の消費者契約法9条では、契約解除に伴う違約金などが事業者に生じる「平均的な損害」を超える場合、その超過部分を無効としている。検討会では、この解約料条項に関する規定に加え、事業者による解約料の説明を通じてトラブルを防ぐ仕組みや、事業者・業界団体による自主規制の活用についても検討を進めている。
 今回の議論は、消費者契約法をトラブル発生後の「取り消し」「無効」を中心とする法律から、被害を未然に防ぎ、消費者が安心して取引できる市場をつくるためのルールへ広げようとする点に特徴がある。中間取りまとめ案でも、従来の取消権や契約条項の無効だけでは、多様化し変化する取引環境への対応が難しくなっているとの認識を示した。
 検討会は、2025年11月に始まり、途中、計8回のワーキンググループでの議論を重ね、2026年5月に論点整理が公表されている。今回の中間取りまとめは、そうした議論を踏まえ、今後の制度設計につながる方向性を整理するものとなる。
 ネット通販やサブスク、デジタル広告など契約の形が複雑化する中、消費者自身がすべての情報を理解し、常に合理的に判断することを求めるだけでは被害を防ぐことが難しくなっている。「誰もが脆弱になり得る」との発想を消費者契約法にどこまで取り込み、事業者側にどのような責任や配慮を求めるのか。今後の法改正につながる具体的な制度設計が焦点となる。
 次回は、9月9日に第9回検討会が開かれ、中間取りまとめ案について議論する。

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