都道府県相談員の採用時給与調査

月18万円~20万円程度と低額

担い手確保へ処遇改善急務

 相談員不足が深刻化する中、都道府県の相談員給与は月額18万円~20万円程度にとどまる実態が、全国消費者団体連絡会が実施した都道府県の消費者行政調査で明らかになった。3月19日に開催されたシンポジウムでは、国家資格が必要な職務でありながら低水準で、担い手確保には処遇改善が急務であることが指摘された。消費者庁地方協力課の赤井久宣課長が、地方消費者行政を支援する交付金の見直し内容を報告し、新たなメニュー「相談・見守り連携強化型」は、一気に処遇改善を図りたいという狙いがあると説明。池本誠司弁護士は、新たな交付金の活用に向け、首長や議員も巻き込んで自治体の政策判断そのものを動かす取り組みが必要だと訴えた。(相川優子)

新交付金 見守り活動含む人件費支援 相談員処遇改善を後押し

 都道府県の消費者行政調査は2018年から同連絡会「地方消費者行政プロジェクトチーム」が毎年実施している。今回は2025年8月~9月に47都道府県を対象に、消費生活相談員の採用状況や採用時給与などを調査した。
 調査の結果、47都道府県に勤務する相談員のうち、正規職員は1県2人にすぎず、外部委託の8県を除く39県では、ほとんどが会計年度任用職員として採用されていた。
 勤務日数は週1日~2日程度から週5日まで幅があり、給与形態も月給、日給、時給とばらつきが大きい。
 このため、一律比較は難しいが、最も多かった週4日勤務18県のうち、日給を除く「週4日勤務・月給」16県の平均は、約18万8300円だった。週5日、月20日の勤務の10県のうち、日給、時給を除いた「週5日・月給」4県の平均が、約20万4700円だった。

県での採用時給与


有資格者いない。低い処遇、高齢化

 一般職大卒の初任給は23万2000円と比べても低い水準にあるとして、処遇改善を求める声が上がった。
 全国消費生活相談員協会参与の尾嶋由紀子さんは、「国家資格が必要であるにもかかわらず、採用時給与は低額で、昇給もほとんどない。このような処遇では若い人に消費生活相談員になってほしいと勧めることが難しく、担い手確保には処遇改善が何より必要」と訴えた。
 会計年度任用職員の制度でボーナスが支給されるようになり、都内を中心に給与の見直しが行われ「月16日・月給」で約31万円の自治体も出るなど改善の兆しはある。尾嶋さんは「その一方で、地域間格差が拡大している」として、全体的な底上げを強く求めた。
 募集時の課題としては「有資格者の応募がない」「有資格者がいない」「候補者探しに苦慮している」など、有資格者確保の難しさを挙げた都道府県が多かった。体制維持に関しても「高齢化」「次世代を担う若い世代の人材確保」などが課題として挙げられた。
 さらに「待遇・処遇改善(給与)に課題がある」「精神的負担が大きいのに処遇が十分でない」「待遇面で訴求力に欠ける」といった指摘もあった。


交付金を活用し相談員報酬引き上げを

 赤井課長は、交付金の見直しで新たに創設されたメニュー「相談・見守り連携強化型」について、「積極的に相談員の処遇改善につなげていただきたいというのが創設の趣旨の1つ。ある意味一気に加速する形で処遇改善につなげたいという思いがある」と説明した。
 新制度では、従来の相談業務に加え、出前講座や見守り活動を担う構成員へ情報提供をする新たな役割を担う相談員人件費の2分の1(もしくは300万円のいずれか低い方)を、継続的に国が補助する仕組みが盛り込まれている。1自治体あたり2人以内。見守り活動支援実施経費は1自治体あたり30万円(広域連携50万円)を上限に10分の10を国が補助する。


情報提供24回、訪問に限らず。メーリングリスト幅広く対象

 尾嶋さんは、活用要件とされる「情報提供24件」について、丁寧な説明を求めた。
 これに対し赤井課長は、「現場に出向かなければならないという誤解があり、活用が進まない原因の一つ」と述べ、対象は見守りネットワーク(消費者安全確保地域協議会)の構成員への情報提供で、出前講座のほか、協議会への情報提供、メーリングリスト等を用いた構成員への情報提供、オンラインでの情報提供なども広く含まれると説明した。
 「従来の相談業務に加えて、見守り活動支援を新たな業務と位置付け、その分を上乗せして交付金で支援する制度設計としているため、実施は必要。行政職員がコーディネートしてサポートしてほしい」 とも述べた。
 2026年、2027年は先行実施期間と位置付け、「24回達成できない場合に直ちに補助金返還」という運用は想定していないとし、見守り活動支援等を通じた相談件数前年度実績の1.1倍についても、相談件数は可能な範囲で把握すればよく、まず試行し、課題把握しながら本格実施に向け整理していく方針を示した。
 あわせて「消費者行政予算が前年度予算と比較して減少していない」要件については、「役割が増えるのに相談員の給与が同じ」「一般財源を国費に置き換える」ことは避けたいと強調。「国の交付金で措置された分は、全部でなくても相談員の処遇改善や啓発の充実等に振り向けてほしい」と述べた。
 前年度の一時的増や全庁的なシーリング減など担当部局の努力で如何ともしがたい場合は考慮するとした。小規模自治体で使いきれないという意見も把握しており、実情を踏まえ、何ができるか今後検討したいとも話した。


協議会・見守りネットワーク、先行実施でガイドラインへ

 消費者安全確保地域協議会についても、消費者安全法に基づく協議会ではなくても、見守りネットワークが設置されていればよく、2026年までに設置することを求めている。見守り活動の活性化、未然防止機能の強化、被害の探知機能の強化、消費生活センターへの接続(つなぐ)ことを狙い、協議会を「作る」だけでなく、見守り活動が実際に回り始めるようインセンティブとして整備したと説明した。民間団体2団体の参加要件は、自治体の声を踏まえて削除した。今後、既存の福祉等のネットワークに上乗せする場合の設計(要項作成や役割分担等)について、先行実施事例を集め、ガイドラインまたは事例集などで示す方針を示した。


県独自の資格養成講座実施。75%が新たな相談員を採用

 同日は、資格養成講座を独自に実施している12県のうち、9県が新しい相談員の採用につながったと回答した調査結果も報告された。採用につながった割合は75%に上る。
 一方、独自に養成講座を実施していない35県にその理由を聞いたところ、30県は「消費者庁などの企画を案内しているから」と回答した。他に「予算を確保するのが困難だから」(9県)、「すでに相談員が確保できているから」(4県)、「参加申し込みが見込めないから」(3県)などが挙げられた。
 消費者庁が実施する無料のWEB講座への期待が大きい一方で、地域の就職・採用につながる県独自のきめ細かな講座が有効で、両輪での取り組みが必要との指摘が出た。

県での資格養成講座


熊本県 2種類の養成講座で、新たな相談員確保を実現

 熊本県消費生活課の浦田武史課長は、消費生活相談員の担い手確保に向け、目的別に2種類の講座を実施していると報告した。「担い手育成支援講座」は、相談業務・消費者行政の基礎理解、市町村センター見学や相談員との意見交換などを半年で9回行い、3年間で約100人が受講した。
 「資格取得講座」は試験合格を目的に、現役相談員が過去問解説や小論文対策等を10月までに4回実施。2025年度は受講者20人のうち半数が育成講座経験者で、合格者は3人だった。
 現状、住民10万人当たりの相談員数は全国平均2.7人に対し熊本は5.4人(全国3位)と比較的充足しているが、約70人の相談員の7割が60~70代で高齢化が課題という。講座が対面中心のため受講者が熊本市周辺に偏り、遠隔地市町村とのマッチングが難しい点も指摘した。今後は新たな交付金を活用し、関係法令の深掘りや事例対応など実務的研修を加え、国のeラーニング講座とも連携しながら柔軟な運用をしていく方針を示した。
 シンポジウムの司会を務めた池本誠司弁護士は、国の講座と地域の講座をどう位置付け、交付金のメニューで何ができるのかを質問した。
 赤井課長は、オンラインで基礎的な知識や業務の概要等を学び、事例検討などの実践的な講座を全国10カ所で対面のグループワークとして実施していると説明。「就業に結びつきにくい」との指摘を踏まえ、都道府県との連携を強化しているという。国が薄く広く基礎を担い、その上に実情に合った実践的・効果的な取り組みを都道府県が積み上げる形が有効との考えを示した。
 新たな交付金では、都道府県向けのメニュー「担い手確保・人材育成・強化型」を用意し、「都道府県が市町村の配置状況・将来見通しを踏まえて計画的に相談員を養成することを期待している」とその狙いを説明した。
 相談員養成講座の開催経費や、職業体験などの就業促進費、業務PR経費を、1都道府県200万円を上限に2分の1を補助する。
 さらに、相談員の担い手を計画的に育成するための実務訓練(OJT)について、修習生の人件費、研修参加経費等を10分の10(1都道府県1750万円上限)、1人の研修生につき3年間補助する仕組みも導入した。市町村に修習生を配置することもできる。
 赤井課長は、修習生は相談員の“卵”として広く捉え、資格の有無を問わず、習熟度に応じてベテラン相談員の横で実務を学ぶほか、実際に相談を受けて経験を積むことなども想定されると説明した。一方で、ベテラン相談員や既に一般財源で措置されている相談員の人件費を交付金で置き換えることは対象外と整理した。
 相談員1人体制の窓口の後継育成については、退職が事前に分かっている場合はダブル配置して、引き継ぎ・指導を可能にする、相談件数が少なく経験が積みにくい場合は県センターでの就労を経て市町村に配置する、市町村支援員の巡回指導を利用するなど、工夫して交付金を活用してほしいと述べた。
 SNS等の高度な相談に対応する特定領域相談員(国が人件費の2分の1もしくは350万円の低い方を補助)や、市町村への巡回・助言・PIO‐NET入力支援・事例検討等を行う市町村支援員(人件費の3分の1もしくは220万円の低い方を国が補助)の配置で、県の相談員を増員することも可能と説明した。


池本弁護士「新交付金は体制強化の転機」「首長・議会も巻き込み政策判断を動かす必要」

 池本誠司弁護士は、新しい交付金は「従来の交付金が少し延長された」というレベルを超え、地方消費者行政の体制そのもの、すなわち相談員の役割や消費生活センターの役割を、これまでよりも一段踏み込んで展開していく契機になると位置づけた。
 一方で、交付金が「2分の1補助」になったとしても、相談員の雇用・処遇は会計年度任用職員制度など各自治体の制度に強く左右されるため、消費者庁の制度設計だけで問題が解決できるわけではないとも指摘。だからこそ、各地域で消費者団体や弁護士会などが連携し、地域で起きている深刻な消費者被害の実態(ネット被害や訪問販売を含む詐欺的な商法が横行している状況)を踏まえ、「住民を守るために予算をしっかり投入してほしい」と自治体に求めていく必要があると主張。
 消費者行政担当部署だけに訴えても、自治体の中では消費者行政部門が小規模で影響力が弱い場合が多いことから、担当部署に限定せず、首長や議員も巻き込んで自治体の政策判断そのものを動かす取り組みが必要だと呼びかけた。
 地方消費者行政担当者や消費者団体メンバー、弁護士ら、93人が参加した。

①募集時の課題
②体制維持に関する課題


解説 持続可能な相談体制へ。新たな交付金の活用を

 2009年の消費者庁創設時、全都道府県に消費者行政を専門に担当する「消費生活課」が設置されることを夢見た。消費者行政の現場は、消費生活相談を実施する地方にある。
 しかし、現実は違った。「消費生活部」があるのは東京都のみ。2012年度に24道府県まで増えていた消費者行政専管の課や室は、2025年度は17都道府県に減少し、「消費生活課」があるのは13都道府県に過ぎない。係すらない県が5県に増えた。
 都道府県の消費者行政職員は2011年の1093人をピークに減少に転じ、2025年度には946人と147人も減った。このうち、消費者行政のみを担当する専任職員は740人。東京都が194人を占める一方で、4~5人しかいない県もある。これでは、悪質な事業者への法執行はおろか、事業者指導すら十分に行えない。
 2011年に何があったのか。2009年に消費者庁創設を検討した通常国会での修正合意を受け、消費者庁と消費者委員会で相談員人件費への恒久的な財源措置が検討された。しかし、実現できないことが明らかになったのがこの年だ。
 民主党が提出した「消費者権利院法案」は相談員を国家公務員としており、枝野幸男氏は「恒常的に人件費が確保できる措置が他にあるか」「(地方交付税措置は)算定基準にすぎない。やらないところが出てきても仕方ない制度」と主張。小宮山洋子氏は「全国一律に一定水準まで速やかに引き上げる必要があるということで、ある意味緊急的避難措置。将来的に地方自治体が担っていくことを指定するものではない」と説明した。
 2日間にわたる修正合意で交付金を増員した相談員人件費に活用することとし、修正合意の立役者となった仙谷由人氏は、「地方財政法の改正あるいは基準を国の法律で定めれば予算的な措置が合法的にできると随分申し上げた。付則で書いたので消費者庁・消費者委員会の中で具体的な制度化について成案を作っていただきたい」と述べていた。
 しかし、民主党政権に代わり官房長官となった仙谷氏は、事業仕分け人の民間人、福嶋浩彦氏を消費者庁長官に起用。福嶋氏は地域主権を掲げ「基金(交付金)終了後の財源確保は自治体の課題」と主張した。蓮舫行政刷新相が消費者相を兼務する状況下で、消費者委員会地方消費者行政専門調査会は報告書に「消費者行政に確実に使われる財源措置」を盛り込むことはできなかった。消費者庁でも地方消費者行政本部を設置して検討を開始し、相談員の報酬引き上げに活用することを決めていたが、長官交代後に方針が大きく転換された。
 今回の交付金見直しを実現した赤井久宣・地方協力課長は、当時地方協力課課長補佐として上記の国会審議等を踏まえ、相談員人件費への財源措置を検討した人物でもある。相談員人件費への国の安定的な財源措置の実現は、消費者庁の“悲願”として、その第一歩である交付金の見直しに課の職員と共に、並々ならぬ思いで取り組み、実現させた。内閣府時代に積み上げた財務省との信頼関係があったことも大きいとの指摘もある。
 通常の相談業務に加え見守りを支援するとの要件はあるが、国の継続的な相談員人件費への2分の1補助を実現した。現在は3分の1が主流になっていることから強化交付金の仕組みをそのまま残し、2分の1を実現させている。
 枝野氏が2009年に指摘したとおり、地方に配分される地方交付税の算定措置に消費者行政予算が積算されていても、消費者行政予算に使うかどうかは自治体の裁量に委ねられている。
 しかし、その逆もまた然り。消費者行政予算として措置されたものが現実的に自治体で消費者行政予算として使われていないとしても、同じ名目の予算を国が2重に措置することはできない。このため、見守り活動支援や国の消費者行政の基盤となるPIO‐NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)への3勤務日以内の入力という新たな役割を果たすことを前提に、交付税算定措置に上乗せする形で相談員報酬基準額を600万円まで引き上げている。
 2018年度に交付金が大幅に削減されたことを背景に、2019年度と2020年度に相談員が100人減少し、その後も回復できていない。相談員がいない市町村は716自治体と全市町村の42%に増えた。60歳以上の相談員が54.2%を占め、相談員の担い手不足が深刻だ。
 相談員の処遇を改善することが、不可欠。早急に実現する必要がある。
 見直された交付金を、相談員報酬の引き上げや相談員の増員になんとか活用してほしい。この交付金が活用できるかどうかは、自治体の行政職員にかかっている。
 市町村に専任職員はほとんどおらず、他の多くの仕事と兼務する中で厳しい状況がある。自治体内の横並びで、相談員報酬を消費者行政担当部局だけでは引き上げられない状況があることもわかっている。
 しかし、今回の交付金の見直しは、「最後の切り札」。交付金の予算は、どんなに頑張っても30億円程度に限定されているのも現実だ。
 この交付金を相談員の人件費になんとか活用し相談員報酬を引き上げてほしい。その上で、現在の予算補助から、消費者安全法に位置付けるなどの法律補助に拡充するなど、相談員人件費への恒久的な国の財政措置につなげていくべきである。交付金を活用しなければ予算措置は必要ないということになりかねない。実現できなければ、継続的に相談員を確保できなくなる。相談自体がなくなる自治体が増える差し迫った危機感がある。
 国家資格を取得しているにもかかわらず、非常勤の会計年度任用職員で、1年ごとに契約を更新する不安定な身分であるという最大の課題も残されたままだ。
 日本消費経済新聞の休刊で、今後この媒体で情報が発信できなくなる。最大の心残りだ。この交付金が相談員人件費に積極的に活用され、相談員人件費への恒久的な財政措置が実現することを切に願っている。(相川優子)

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