環境省と一般社団法人日本エコツーリズム協会は2月12日、「第21回エコツーリズム大賞」の受賞者を発表し、26日に表彰式を開催した。エコツーリズムは、自然環境や歴史・文化などを学びながら、それらの保全に責任を持つ観光のことで、地域の宝を守り、その魅力を観光客に伝える地域主体の取り組みだ。同賞は、エコツーリズムに携わる個人事業者や企業、教育機関や団体などを対象に、優れた取り組みを表彰するもので、2005年から行われている。今年度は9月5日から11月26日の期間で募集が行われ、22件の応募があった。環境大臣賞最優秀賞には、北海道津別町で持続可能な森の保全に向けて、自然資源を活用した様々な体験ツアーを提供するとともに、収益の一部を地域に還元する「観光地域づくり」に取り組む特定非営利活動法人森のこだまが選出された。同賞優秀賞は、鹿児島県甑島(こしきしま)列島の上甑島を拠点に、マリンアクティビティや周遊ガイドツアーを提供するこしきツアーズ㈱のほか、サントリーホールディング㈱(大阪府)と東近江市エコツーリズム推進協議会(滋賀県)が受賞した。同賞特別賞は、愛知県立猿投農林高等学校環境デザイン科の学生有志のほか4件が受賞した。猿投農林高等学校は、同賞開始以降初の高校生からの応募で、初の受賞となった。表彰状の授与に際し、青山繁晴環境副相が「環境教育や保全活動への受賞者の取り組みは、環境省としてとても心強い。今回の受賞を機に、全国各地で携わる人たちの励みとなるよう、より一層積極的に活動してほしい」と祝辞を述べた。(原田恵理)

エコツーリズムは、別名「責任ある観光」と呼ばれる。単に「自然を見る」旅行ではなく、地域の自然や文化を守りながら地域社会を活性化に導く、いわば「観光を育てる」取り組みだ。同省はエコツーリズムを、環境保全や観光振興、環境教育の推進に重要な役割を担うものと位置付け、2011年に「エコツーリズム推進法」を施行している。
最優秀賞を受賞した森のこだまの活動拠点は、道東の阿寒摩周国立公園に隣接した津別町にある。森林セラピー基地として運営するネイチャーセンター「ノンノの森」は、夜のとばりが降りたあと、屈斜路湖を望む津別峠展望台にのぼり、息を飲むほどの自然美を目の当たりにするツアーを提供する。夜空に宝石を散りばめたような星の瞬きや、昇る朝日が紫色に染めていく見渡す限りの雲海に「エモーショナル」な感動を覚え、その後で「なぜ」その自然現象が生じるのかを学ぶ。美しさに心が震えた「感性」から、その現象への興味を駆り立てて「知性」を引き出すことで、自然への「愛」を育む。
代表を務める上野真司さんは、2010年に神奈川県から移住。津別町の倒産した宿泊施設の再生を担当した。移住当初、津別峠展望台は無人・無料の施設で、時折観光客がトイレを利用する程度。「それなら」と夜間に利用し観光資源にすることで、収益を展望台の維持費などに充てようと考えたという。上野さんは現在、行政など各方面に呼びかけて、同町を阿寒摩周国立公園に組み入れるよう働きかけている。
優秀賞のこしきツアーズの舞台となる甑島は、鹿児島県の西の沖合。東シナ海に北東から南西に細長く連なる列島で、上甑島・中甑島・下甑島の3つの有人島のほか、多数の無人島で構成されている。昔ながらの玉石垣や手つかずの自然が残り、どこか懐かしい風情が漂う土地柄だという。宿泊施設やレンタカーなどの観光向けサービスが乏しいことから、同社では、船や宿泊、レンタカーなどをセットにしたプランを提供する。島の状況や情報、経験をもとに、来訪者に合わせた旅行をアレンジすることで、島の魅力を体感してもらう工夫を凝らす。環境教育に向けた「漂着物レクチャー」を実施するなど、子ども向けの体験プログラムも用意する。
特別賞の猿投農林高校は、愛知県豊田市小原地区の過疎化と地場産業の採石場の衰退を背景に、長蔦歓奈さんら有志が観光と産業を両立させるアイディアを提案。美濃焼の原料の採石場で使用できずに廃棄処分されてきた石材や土砂災害(2023年)で発生した廃石材を、造園資材としてブランド化した。砕石跡地を庭園・公園化することで、地域を周遊観光する仕組みを構築。「高校生が作ったガーデン・ツーリズム」として展開している。長蔦さんは、環境デザイン科で造園を学ぶ。作庭については、「自分がデザインした庭を形にするための工夫が楽しい」と話した。同行した森啓佑教諭は、「授業でも部活でもない有志による活動である点が素晴らしい。後輩たちにも継承してほしい」と教え子の栄誉に目を細めた。