消費者委で加盟店管理義務など検討
ネット決済後にコンビニなどで代金を支払う「後払い決済」が、詐欺的定期購入に用いられ、被害を拡大させている。法規制がなく、後払い決済事業者から契約を切られても別の事業者に乗り換えて同様の販売を続ける定期購入事業者がいることや、定期購入事業者と交渉が難航し、協力を求めても十分な対応がされない問題などが相談現場から指摘されている。後払い決済事業者の代理人弁護士から督促が届いた、訴訟を示唆する通知が届いたといった相談も増えているという。対応策を検討している内閣府消費者委員会の専門調査会では、委員から加盟店調査義務や苦情適切処理義務の導入を求める意見が出ている。法のすき間に落ちる「キャリア決済」についても同様の意見に加え、キャリア決済と通信・通話料の分離を求める意見が出ている。今後の検討状況が注目される。(相川優子)


消費者委員会の「支払手段の多様化と消費者問題に関する専門調査会」(座長:坂東俊矢・京都産業大学法学部教授、15人)では、昨年11月から、「後払い決済」と「キャリア決済」について、法規制がない状態が看過できるのかなどを論点に検討に着手。予防、未然防止、解決、被害救済、再発防止策の具体的な議論を進めている。
「後払い決済」とは、紙やメールなどで送付される請求書を用いて、コンビニや銀行等から後払い決済サービス事業者に対して代金を支払う決済手段をいう。個々の商品・サービスの購入時に与信を受け、カードなどを利用することなく、2カ月以内で後払いができる。
消費者委員会事務局によると、後払い決済サービスの国内市場規模は、2021年度は1兆820億円だったが、2024年度には1兆7542億円に伸長。伸び率は2022年17%、2023年度21%、2024年度15%で推移し、2025年度は2兆円、2028年度には2兆8000億円を超えると予測されている。
後払い決済の相談件数は、2021年度の2万302件から2024年度は5万7702件に増加し、3年で2.8倍になった。
大きな特徴は、契約当事者の年代が70歳代が最も多く、50歳以上で突出して多くなっている点だ。委員からは「事前にカードなどを準備しなくても請求書が届き、支払えてしまうため、予備知識の少ない層ほど選択しやすい一方で、リスクを理解しにくい」との指摘が出た。
男女比に大きな差はなく、販売形態は通信販売がほとんどを占める。契約金額は「1万円~5万円未満」が最も多く、次いで「1000円~1万円未満」が続くが、複数回の利用で累積的に高額化し得ることから、統計の読み方には注意が必要との意見も出ている。
相談事例では、「継続回数の約束なし」との表示を見て申し込んだはずが、クーポン使用をきっかけに回数縛りの定期購入に変更され、解約に応じないまま後払い決済で請求が続くケースや、定期購入のつもりがないのに2回目以降が届き解約に応じず後払い決済の請求が続くケースなどが報告された。
こうした局面で問題になるのが、販売事業者と決済事業者の間で責任の所在が曖昧になり、解決が進みにくい問題だ。委員からは、販売側に連絡すると「決済に聞いてほしい」と言われ、決済側に連絡すると「販売側に」と返される“たらい回し”が起こり得ることが、相談現場の実態として語られた。
また、督促の通知を受けた消費者が心理的に追い込まれやすい点も論点に挙がった。事例には、後払い決済を巡り法律事務所名が記載された督促のショートメッセージが届いたものの、本人に身に覚えがないという相談も含まれており、委員からは本人確認の在り方や、なりすましが疑われる場合の対応についても掘り下げが必要だとの意見が出た。
2021年に創設された業界団体「日本後払い決済サービス協会」(正会員6社+準会員1社)のヒアリングでは、後払い決済をめぐるトラブルの発生源は、決済そのものというより、加盟店の販売方法・表示・対応にあるとの認識が示された。
協会側は、購入者からの問い合わせは「支払方法や請求書に関するものを除けば、販売店の販売方法・表示・対応等の運用に関するものが非常に多い」と報告。「一部の悪質な販売方法等を行う販売店では、購入者が購入の基礎となる情報に誤認が生じることにより、トラブル・苦情が発生している」との認識も示した。
また、消費生活センターからの協会加盟社への問い合わせは直近「月200件程度」で、PIO‐NETで公表されている後払い決済の相談件数(月3700~4000件程度)と比べると「5%程度」にとどまると説明。残りの多くは、BNPL事業者では直接解決できない販売店起因の問題があり、販売店側に連絡しているのではないかと推察しているという。
こうした問題意識の下、協会が強調したのが「加盟店管理」の強化だ。協会は2022年3月に加盟店審査の自主ルールを策定し、割賦販売法の加盟店管理規制を参考にしつつ、後払い決済の特性に合わせて運用しているという。
ただし、委員からは「ルールが抽象的で、運用にばらつきが出ないか」との疑問が出た。協会側は、自主ルールが守られているかの点検は行っている一方、各社が持つ具体的な審査基準の中身までは把握していないと回答。結果として、協会として「最低限の枠」は示すが、加盟店審査の細部は各社に委ねられている実態が浮かび上がった。
また、悪質な販売店が決済事業者を乗り換える問題への対策として、加盟店情報交換制度の本格運用を挙げた。2025年1月から強化した制度で、一定件数の問い合わせ等が生じた加盟店を登録する「インシデント発生情報」(6カ月保管)、是正・改善の過程を記録する「苦情調査情報」(5年保管)、悪質行為認定や契約解除に至った「強制解約情報」(5年保管)など、段階に応じてデータベース化し共有する。店名だけでなく社長や住所等の情報も含め、名義変更や看板の掛け替えによる再参入も検知できる設計だと説明した。
相談現場からは、「加盟社に関する相談が減ってきた一方で、非加盟事業者に関する相談が多い」との指摘が出され、議論は「協会に属さない事業者」に及んだ。
協会側は、国民生活センターからの要望も踏まえ非加盟社への声掛けを始めたが、現時点で加盟の意思表明はないと回答。会費負担や自主ルール遵守への懸念に触れ、会費体系を柔軟化する検討を挙げたものの、アウトサイダー(非加盟事業者)への対応は大きな課題として残る。
消費者対応の体制も論点となった。協会は、消費生活センター向けには2022年1月に各社の専門ダイヤルを設置したと説明。一般消費者向けの相談窓口を年度内に設置する構想も示した。電話とフォームで受け付け、協会加盟社の案件であれば協会から該当事業者に連携し早期解決を促す狙いだという。ただし、どこまで踏み込んだ対応(単なる情報集約か、実際の解決調整か)ができるのかは今後の設計次第だ。
定期購入で消費者が解約を求めた場合の対応について、協会側は、都度審査で利用可否を判断するとしつつ、解約の可否は基本的に販売店の契約条項に従うとの説明にとどまった。
委員からは、与信(審査)や情報管理の在り方についても質問が出た。協会側は、取引ごとの審査は各社で実施しているが、審査方法は各社で異なり、協会としての統一ルールはないと説明。信用情報機関のように未払い等の情報を業界で共有する枠組みも現状は整っておらず、必要性の議論はあるものの具体化は進んでいないという。
消費者が販売店に対して有する抗弁を決済事業者にどこまで対抗できるかという論点についても、協会として統一ルールは未整備で、今後の検討課題とした。
加盟店情報交換制度の強化など業界の自助努力は前進といえるが、非加盟事業者を含めた実効的な加盟店管理や苦情処理をどう実現し、抗弁対応の考え方をどう整理するのか、制度としての“穴”をどう埋めるかが問われている。
「キャリア決済」は、携帯電話の代金と合算して、携帯電話以外の商品やサービスの代金を支払う決済手段。「キャリア決済と通信・通話料の分離ができず、支払い停止ができない」という相談が多く問題になっている。
相談件数は年間5000~6000件程度で横ばいとされる一方、20歳未満の相談が最も多いのが大きな特徴だ。相談事例では、携帯電話料金と合算して支払える手軽さから、身に覚えのない高額請求が届いたケースや、子どもがオンラインゲームで課金して高額請求に至ったケースなどが報告された。
委員からは「支払わなければ通信停止と言われれば、苦情申し立てそのものを諦めざるを得ない。通信料金はまさに社会生活上の不可欠なツールであるということで破産手続きでも特別に扱われている。キャリア決済は合算した他のサイト業者の代金も、支払わなければ通信が停止するというとんでもない効力を規約によって導入していることになる」「現代型の電話担保金融になっているのが実態。全く別の2つの契約を分離できないというだけの理由で支払わせ続けている」などの問題提起が相次いだ。
キャリア決済に関わる業界団体「電気通信事業者協会」(正会員47社・賛助会員9団体・企業)のヒアリングで、同協会は「キャリア決済」は、オンライン加盟店でのデジタルコンテンツ購入やアプリ課金などの代金を、月々の携帯電話料金とまとめて支払う方法だと説明した。
利用者保護の仕組みには、決済時の本人認証、購入前の確認画面、レシートメール送付、利用明細の確認などを挙げた。使い過ぎ防止では、年齢に応じた月額上限があり、利用者自身が上限を下げたり、利用停止設定をしたりできる。未成年については、契約時の年齢確認や親権者同意、上限額を低くする運用、フィルタリングによるアクセス制限などで対応していると説明した。
委員や相談現場からは「トラブル時にどこへ相談すればよいのか分かりにくい」ことが問題視された。協会側は同協会の相談窓口と各社の総合窓口があると説明したが、委員側からは、ホームページ上では「ネット取引トラブルは受け付けない」旨の記載もあり、実務上は案内が難しい。各社窓口でも「請求代行なので加盟店へ」とされがちで、実際に消費者や相談員がたどり着ける形になっておらず消費者保護につながっていない課題が浮き彫りになった。
相談件数のギャップも議論になった。協会側は、協会窓口に寄せられるキャリア決済の苦情は年数件程度、各社への問い合わせも年10数件~数10件程度と説明したが、実際の相談件数や相談現場の感覚とは差が大きい。相談が「加盟店側の問題」としてキャリア側に届きにくい構造が、実態把握を難しくしている可能性が示唆された。
加盟店管理では、不適切な加盟店には調査・指導・改善要請を行い、改善がなければ新規停止や契約解除もあり得ると説明された。委員からは、苦情情報がそもそも届きにくい状況で、どのように不適切加盟店を把握し、どの程度の実績があるのか、また割賦販売法の加盟店管理に類似する考え方がどこまで応用されているのか、といった点で透明性を求める意見が出ている。
協会側は、法令上は「マンスリークリア」で割賦販売法の適用はないとの認識を示しつつも、加盟店管理の考え方は可能な限り取り入れていると述べた。
最大の焦点は、合算請求による「支払い停止の困難さ」だ。「解約交渉や返金交渉が長期化した際でも、通信停止を恐れて支払いを続けざるを得ない」「支払わなければ通信が止まる」という強い圧力が生じ、消費者が不利になる構造の問題が指摘された。倒産手続(破産・再生)の場面で、端末代金やキャリア決済分が通信料金と一体で扱われることで強行法規と衝突し、生活インフラが事実上の”担保”として機能してしまうのではないか、という指摘もあった。
この問題については、運用確認が必要として、文書照会など「宿題」として持ち帰られることになった。
相談処理対応や加盟店管理の実効性、キャリア決済と通信料の分離の可否を含む制度設計の再検討が論点になっている。非公開で各社へのヒアリングが継続されており、夏に報告書をまとめる。