グリーンピース・ジャパンはこのほど、サツマイモ、ナシ、ブドウ、コメの4品目について、気候変動が生産現場に及ぼす影響を調べた報告書「秋の味覚が告げる気候変動の影響」を公表した。1966~1975年と2016~2025年の10年間を比較し、各作物の生育に関係する時期の気温の変化を分析するとともに、2026年5月下旬から6月にかけて生産者へのアンケート調査を実施した。個人生産者、農業協同組合、生産者団体など全国から32件の回答が寄せられた。
気温データの分析では、サツマイモの主要産地である鹿児島で、6~10月に日最高気温が30℃以上となった日数が、1966~1975年の年平均67日から2016~2025年には90日に増加した。ナシでは千葉県銚子のデータを分析し、同じ期間に30℃以上の日数が5.5日から35.8日に増加した。ブドウの産地である山梨県甲府では、7~8月の日平均気温が27℃を超えた日数が、1966~1975年には0日だったのに対し、2016~2025年には43日となった。コメについては新潟県高田の気温を調査し、8月の日平均気温が27℃を超えた日数が4日から22日に増加した。
報告書では、こうした高温条件が、それぞれの作物の生育や品質に及ぼす影響について、既存の研究と生産者の声をもとに分析している。ただし、報告書は気温指標が収量や品質の低下を直接測定するものではなく、収量の変化を気候変動だけに帰属させることを目的としていないとしている。
サツマイモについては、高温によって生育や発達に影響が出て、サツマイモが小さくなったり軽くなったりするなど、品質の低下や収量の減少につながる可能性があるとする研究を紹介している。特に夜間の気温も重要で、生育後半の肥大期に夜間気温が22℃を超えると、塊根の肥大が著しく抑制されるおそれがあるという。
生産者からは、暑さに加えて雨が降らないことへの影響を指摘する声が寄せられた。神奈川県のサツマイモ農家の宮本さんは、夏場について「ずっと暑くて雨も降らない。夏も乾きっぱなしだった」と回答。日中の気温が高くても、その後に気温が下がることでサツマイモが育っていくが、「ずっと暑かったので、そういう(涼しくなる)リズムがないと、サツマイモにとっては成長のタイミングを逃してしまう」と話している。
宮本さんからは、2024年度と2025年度に収穫量が大きく減ったことや、サツマイモの表面にコブのようなものができるなど品質面での変化、コガネムシによる被害も報告されている。別の神奈川県の生産者からも、干ばつによってつるが枯れたり、サツマイモが少ししかできなかったりしたとの声が寄せられた。
ナシでは、高温の発生頻度が高まることで、「日焼け果」や「みつ症」といった生理障害が起こり、果実の品質が低下するほか、着色の遅れや軟化が進む可能性が指摘されている。
また、品種によって影響の出方には違いがあり、特に「新高」は、みつ症や日焼け果の影響を強く受けている。千葉県では、「高温と少雨」を理由に、「新高」から「かん太」や「秋満月」への品種転換が行われている。2025年には10県で品種転換の試みが報告され、そのうち7県が「新高」からの転換を模索していた。
茨城県のナシ農家からは、収穫時期が1カ月ほど早くなったとの回答があった。「ナシが焼けてしまって中身がぐじゅぐじゅになるし、表面も真っ黒になる」と、高温による影響を述べている。
別の茨城県のナシ農家からは、特定の品種で日焼け果や葉焼けが発生しているとの報告があった。千葉県のナシ農家は、「今までにない様々な高温障害」が起きており、品種構成や栽培方法を根本的に見直す必要が出てきていると回答している。
ブドウでは、成熟期の高温が着色に影響する可能性が指摘されている。山梨県甲府では、着色不良につながる温度域とされる27℃を超える日数が、1966~1975年には0日だったのに対し、2016~2025年には43日に増加した。
特に「巨峰」や「ピオーネ」といった黒系品種では、夏の高温によってアントシアニンの生合成が阻害され、着色不良が起こり、果実の市場価値を低下させることが報告されている。
生産者からは、気温の上昇だけでなく、病害虫の発生時期が変化しているとの声も寄せられた。青森県のブドウ農家は、病気の発生が早まったり遅くなったり、長引いたりするため、「今まで通りの作り方ではなかなかうまくいかない」と説明している。従来の暦に沿った農薬散布では対応しにくくなり、害虫の発生が1~2週間早まることもあるという。
コメについては、出穂後の高温によって、不透明で白い乳白粒などの「白未熟粒」が発生し、外観品質の低下や一等米比率の低下につながるとしている。白未熟粒の発生リスクは、出穂後約20日間の成熟期における気温と強く関連しており、この期間中の平均気温が26~27℃を超えると白未熟粒の発生が急増し、特に28℃を超えると著しい被害が生じることが示されているという。
報告書によると、新潟県高田では、8月の日平均気温が27℃を超えた日数が、1966~1975年の4日から2016~2025年の22日に増加した。これは、白未熟粒の発生リスクと関連する高温条件への曝露が増えていることを示すとしている。
生産者からは、高温に加えて雨の降り方の変化など、極端な気象への戸惑いが聞かれた。岐阜県の米農家は、水田の水が高温になり、高温障害が発生して収穫したコメの品質が悪くなっていると回答。「農家の努力でできる対策には限りがある」と話している。
また、別の岐阜県の米農家、菊池さんは、ここ1、2年を見ていると少し収量が落ちているのは、気温が上がり、もともとその品種が持っている適切な温度帯より高くなっていることが、品種的な影響として表れているのではないかと話している。
今回のアンケート調査では、回答のあった32件のうち31件が、過去5年間に「高温・猛暑」を経験したと回答した。「干ばつまたは降水量不足」が24件、「季節のずれ」が18件、「大雨・洪水」が17件だった。
作物への影響では、32件のうち27件が「色・形・味の質の低下」を挙げ、最も多かった。次いで「収量の減少」が21件、「栽培時期の変更」と「害虫の増加」がそれぞれ13件だった。
気候変動による影響の種類や深刻度は、作物や地域によって異なる。一方で、多くの回答者は、こうした影響がそれぞれ独立して起きているのではなく、複数の要因が重なり合っていると説明している。
グリーンピース・ジャパンはこれらの調査結果を踏まえ、気候変動が生産者にもたらす被害の実態調査をさらに進めるとともに、生産者が安定した収入を得ながら、さまざまな適応策を講じ、農業を継続できるよう支援を拡充することなどを政府に提言している。