パーソナルトレーニングの「無料体験」をきっかけに12カ月の定期コースなどを契約し、解約時に想定外の費用を請求されたり、解約したつもりなのに料金を引き落とされ続けたりしたとして、東京都は8月28日、女性2人と事業者との紛争について、東京都消費者被害救済委員会に解決を付託した。パーソナルトレーニングを巡る消費生活相談が急増する中、東京都は、今回の紛争を通じて解決の考え方を示し、同様の被害防止と救済につなげる。

東京都によると、申立人は20代と50代の給与生活者の女性2人。いずれも12カ月間、月額約3万円のパーソナルトレーニング定期コースを契約したほか、4カ月間で4万~5万円弱のエステ契約も結んでいた。
20代女性は、SNSで「短期集中、月8回、1回3000円」という広告を見て無料体験を申し込んだ。体験後、入会金などがキャンペーンで無料になり、中途解約しても特別な料金はかからないと説明され、12カ月のコースを契約。さらに「セット」と説明されたためエステも契約したという。
ところが、数カ月後、予約が思うように取れないことから解約を申し出ると、契約時に無料とされた入会金やオプション料金など計約8万円を「差額金」として請求された。女性は勧誘時の説明と異なるとして、差額金を支払わずに解約したいと主張している。
一方、50代女性もウェブサイトから無料体験を申し込み、その後12カ月の定期コースを勧められた。キャンペーンで無料になった分を差額金として支払えばいつでも中途解約できると説明されたが、具体的な金額や内訳は示されなかったという。また、毎月利用できる回数について説明がなく、女性は「通い放題」だと考えて契約。キャンペーンの適用にはエステ契約が必要だと説明され、本来は不要と考えていたエステも契約。さらに後日、サプリメントの定期購入も強く勧められたとしている。
女性はその後、予約が取れないことを理由に解約を申し出た。事業者からメールが届いたため解約できたと思っていたが、半年後になって、メールに返信しなかったことを理由に解約申請を取り消したと連絡された。その間も半年以上にわたって月額料金が引き落とされていたという。
東京都消費者被害救済委員会では、勧誘時の説明や契約条項などについて検討する予定。中途解約時に支払う金額や予約状況について事実と異なる説明をしたり、不利益な事実を告げなかったりした場合、消費者契約法に基づいて契約を取り消せる可能性がある。また、通常価格が実質的に存在しない場合、キャンペーンで無料とされた金額を解約時に「差額金」として請求する条項についても、違約金的な性質があり、平均的な損害を超える部分が無効となる可能性を検討する。
さらに、未精算金を支払うまで退会手続きが完了しないとする契約条項が、実質的に中途解約を妨げるものではないかも論点となる。本来希望していなかったエステを「セット」などと説明して契約させたとすれば、消費者に選択肢を与えない勧誘方法に問題がなかったかについても検討する。
東京都内の消費生活センターに寄せられるパーソナルトレーニング関連の相談は年々増えており、2025年度は前年度比約1.7倍となった。特に解約や返金を巡る相談が多いという。
東京都は、無料体験だけのつもりで店舗を訪れても、その後に契約を勧められる場合があるとして、「キャンペーン」「無料」などの特典を示されてもその場で決めず、慎重に検討するよう呼びかけている。長期契約を結ぶ際には、料金だけでなく、利用回数や予約状況、中途解約の条件、解約時に発生する費用などを事前に確認することが重要。納得できない請求などのトラブルが生じた場合は、消費者ホットライン「188」などへの早めの相談を求めている。