キャッシュレス決済など支払手段の多様化を受け、消費者委員会は9月17日、支払(決済)サービスについて、業態の違いを超えて共通の消費者保護を確保するよう、金融や消費者政策など関係各省庁に建議した。悪質な販売事業者の排除や過剰与信の防止など、支払手段に共通する5つの「中核的原則(プリンシプル)」を示し、現在は法規制の対象外となっている後払い決済や、携帯電話料金と一緒に代金を支払うキャリア決済についても、消費者保護の在り方を検討するよう求めた。
国内ではキャッシュレス決済の利用が拡大しており、2025年の決済比率は58.0%に達した。政府は将来的に80%とすることを目標に掲げ、中間目標として2030年までに65%を目指している。現金を持ち歩かずに済み、支払いが簡単で、利用履歴を家計管理に活用できるなど利便性が高まる一方、インターネット上で決済する機会の増加などを背景に、トラブルの未然防止や被害救済が容易ではないケースも指摘されている。
支払手段を巡っては、資金決済法、銀行法、割賦販売法など複数の法律があり、所管する省庁も分かれている。決済に関わる事業者の中には規制対象となっているところがある一方で、規制を受けていない事業者が関与している場合もある。
消費者委は、支払(決済)サービスの仕組みが多様化、複雑化し、従来の業態ごとの法制度だけでは横断的な問題への対応が難しくなっていると指摘。どの支払手段を利用しても共通して確保されるべき消費者保護の水準を示す必要があるとして、5つの原則を打ち出している。
第1は、「情報提供の充実」。消費者が自身の事情や取引の特徴に応じて適切な支払手段を選べるよう、利用に関する相談・連絡先や費用などの必要な情報を分かりやすく提供することを求めている。
第2は、「悪質加盟店の排除による未然防止」で、悪質な販売事業者が決済サービスを利用することを防ぎ、問題が判明した事業者については加盟店契約を解除するなど、支払手段を利用できないようにすることを掲げた。
第3は、「紛争解決体制の整備と苦情適切処理」。消費者トラブルが発生した場合、決済に関係する各事業者が協力し、それぞれの責任に応じて対応するほか、消費者からの苦情を適切に処理するよう求めた。
第4は、「過剰与信防止」で、支払(決済)サービスの利用をきっかけとした過剰な借り入れや多重債務の発生を抑える措置を要求。
第5は、「生活基盤サービスの保護」で、決済サービスに関する請求を支払わなかったことを理由として、生活に不可欠なサービスが一方的に停止されないよう求めた。
消費者委は、こうした原則について単に「守ることが望ましい指針」ではなく、達成されるべき結果としての原則を示すものであり、それをどう達成するかについては詳細なルールで縛るのではなく、まずは、サービスの機能やリスクに応じて、関係事業者の創意工夫に委ねるという考え方に基づくものであり、現在、各事業者が何らかの規制の対象になっているか否かにかかわらず、その実現に向けて努力されるべきものであると位置付けている。つまり、実現方法については、一律に細かなルールを定めるのではなく、それぞれのサービスの機能やリスクに応じ、事業者による取り組みを基本としつつ、必要に応じてガイドラインや自主規制、制度による対応を組み合わせる考えだ。
また、現行制度で十分な消費者保護ができない場合には、さらに踏み込んだ対応も求めた。現在、必ずしも法律上の登録や届け出の対象となっていない支払(決済)関連事業者について、その機能や役割の重要性に応じ、登録・届け出の対象とすることを検討するよう提言。特に支払いの実現や利用者保護で重要な機能を担う事業者については、行政による適切な監督の枠組みに位置付けることが重要だとした。
消費者被害が起きた際の救済制度についても課題を挙げた。事業者に一定の対応を義務付けても、個々の被害回復につながらなければ十分な消費者保護とはいえないとして、民事上の権利義務関係を明確にする必要性を指摘。加盟店による債務不履行や詐欺などが明白な場合や、消費者がクーリング・オフなど正当な権利を行使した場合に、支払(決済)事業者から消費者への請求を留保する仕組みなどを検討事項に挙げた。
建議では、「後払い決済」も具体的な検討対象とした。現行の法規制の対象外となっている後払い決済について、利用者に信用を与えて後から代金を回収する仕組みは、割賦販売法が規定する「個別信用購入あっせん」と共通する面があると指摘。取引実態や消費者トラブルの特徴を検証した上で、同法の考え方を参考に消費者保護の在り方を検討する必要があるとした。
携帯電話会社などの「キャリア決済」については、別の問題も指摘。通信料金と商品・サービスの代金が一体的に請求されるため、未払いの場合に通信サービスまで停止される「生活基盤侵害リスク」があるとした。また、後払いで利用者に信用を供与する機能もあるため、過剰与信の防止や利用者保護について、クレジットカードや後払い決済と整合する水準を確保することが重要だとした。
建議では、制度面の整備と併せて消費者教育の充実も求めた。前払い、即時払い、後払いといった決済手段の仕組みや費用、利用限度額、補償制度などの違いを理解し、自らの生活状況や支払い能力に応じて選択できる力を養う必要があるとしている。
さらに、利用規約や契約条件に加え、消費者を特定の選択へ誘導する「ダークパターン」など、デジタル取引の特徴を読み解く力も重視。クレジットカードや後払い、キャリア決済などを含めて将来の支払い負担を把握し、家計を計画的に管理する力や、詐欺的取引、不正利用などへの対応力を身に付けることも求めている。
消費者委は、金融庁、消費者庁、総務省、文部科学省、経済産業省の各担当大臣に建議し、2027年6月までに実施状況を報告するよう求めている。