【いま、消費者の現場で】捨てられるはずだった「はしっぽ」に新たな価値。茨城大学の学生が企業と連携、商品開発や絵本で伝える

 捨てられるはずだったものに新たな価値を見いだし、生まれ変わらせる「アップサイクル」に、茨城大学の学生と教員が企業などと連携して取り組んでいる。
 「干し芋残渣削減プロジェクト(HZP)」は、干し芋の製造過程で発生する残渣(ざんさ)の活用を目指す取り組み。2011年に活動を開始し、学生によって引き継がれてきた。今は3期目の学生が、残渣を使った商品やレシピの開発、啓発活動などを行っている。
 今年3月には、残渣を主人公にした絵本「はしっぽちゃんはたからもの―ちいさなぼうけん」を制作し、アップサイクルの取り組みを子どもたちに伝えている。9月19日には、消費者問題を体験しながら学べる埼玉県の施設「彩の国くらしプラザ」に絵本を贈呈した。同プラザには、金銭教育や悪質商法の被害防止などを学ぶ展示のほか、図書コーナーも設けられている。
 贈呈式の後、HZPで活動する茨城大学の学生の星野夢さんが子どもたちに絵本を読み聞かせた。主人公の「はしっぽちゃん」が、自分の価値に気づいていく物語で、子どもたちは星野さんの声に耳を傾けながら絵本の世界を楽しんだ。
 星野さんがHZPの活動を知ったのは高校生の時だった。干し芋の製造過程で大量の残渣が出ることを知り、驚いたという。「HZPで活動したい」という思いから茨城大学に入学し、現在は3期生として活動している。絵本の読み聞かせやイベントへの参加などを通じて、アップサイクルの意義を伝えている。

「干し芋残渣削減プロジェクト(HZP)」が埼玉県の「彩の国くらしプラザ」に絵本を贈呈した
絵本「はしっぽちゃんはたからもの―ちいさなぼうけん」を手にする彩の国くらしプラザ館長の堀越隆幸さん(中央)と、HZPの石島恵美子教授(左上)、星野夢さん(左下)、絵を描いたたんのみゆきさん(右上)ら=9月19日、彩の国くらしプラザ

干し芋の残渣を「はしっぽ」と命名

 HZPは、茨城大学教育学部の石島恵美子教授が干し芋の残渣を活用する活動について学生に話したことをきっかけに、授業の一環として始まった。
 活動を始めたとき、干し芋の残渣に親しみを持ってもらおうと、学生たちが「はしっぽ」と命名。はしっぽを使ったレシピを考案し、これまでに「はしっぽかりんとう」「はしっぽアイス」「はしっぽソーセージ」などを企業と連携して商品化してきた。
 石島教授がレシピ開発で重視しているのは、短所を補いながら長所を生かすことだ。
 はしっぽには食物繊維が含まれ、料理に加えるとふんわりとした食感になるほか、砂糖を加えなくても自然な甘みが出る特徴がある。「はしっぽアイス」は砂糖の使用量を抑えつつ、ふんわりとした食感とコクを生かして商品化した。

言葉に込められた「もったいない」の心

 アップサイクルに取り組む中で、石島教授が着目したのが「もったいない」という言葉の意味だ。その思いを、絵本「はしっぽちゃんはたからもの―ちいさなぼうけん」に込めた。
 「勿体」は本来、そのものの価値や存在を意味する。「その良さや役割が十分に発揮できていない状態を『もったいない』という」と石島教授は話す。「もったいないは、捨てられる側の気持ち」とし、捨てられることになった「はしっぽちゃん」の悲しい気持ちに気づき、共感が生まれるよう物語が展開する。
 絵本の制作にあたって、イラストレーターのたんのみゆきさんが絵を担当した。HZPの学生から集めた意見をキャラクターや描写に反映させた。日本語の下に英語を記した版もあり、米国での読み聞かせも計画している。

 「特産物の裏には、未利用になっている資源がある」と石島教授は言う。HZPでは干し芋の残渣にとどまらず、北海道のリンゴの残渣とはしっぽを組み合わせるなど、地域を超えたアップサイクルにも挑戦している。今後は、イベントや絵本を通じて活動の輪を小・中・高校生へと広げ、子どもたち自身が「伝える側」となる仕組みづくりを目指す。

HZPから贈呈された絵本「はしっぽちゃんはたからもの―ちいさなぼうけん」。彩の国くらしプラザの図書コーナーに置かれている

▽絵本の詳細は「くらしナビ」関連記事
【絵本紹介】干し芋の残渣問題を、やさしい言葉と絵で子どもたちに

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