客から従業員への暴言や過度な要求など「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防ごうと、消費者庁は10月1日、消費者向けの啓発資料「より良いコミュニケーションのヒント ひと呼吸おいて考えてみよう その一言 ~カスタマーハラスメント防止に向けて~」を公表した。買い物や飲食店など身近な場面での自らの言葉や態度を振り返り、消費者と従業員双方がより良いコミュニケーションを取るための考え方を紹介している。

資料では、カスタマーハラスメントを、消費者の心の中にある不満や焦りが、場面や状況によって行き過ぎた形で表れるものとして捉えている。その上で、「お互いさま」の視点を持ち、不満が生じた場合でも「相手にも事情がある」「自分にも感情のクセがある」と客観的に考え、心に余裕を持つことの大切さを紹介している。事業者側にも、カスハラを未然に防ぐための対応のヒントを示している。
特徴の1つが、消費者自身が普段の言動を確認できる「振り返りシート」。買い物や食事をする際の言葉や態度について、「思い込みが優先しがちかも」「気持ちがダッシュしがちかも」「もやもやが満タンになりがちかも」―という3つの観点から、自分の傾向を振り返ることができる。
「店員ならこれくらい対応してくれるはず」といった思い込みや、急いでいる時の焦り、不満が積み重なった状態など、自分自身の感情や行動の特徴に気付くことで、強い言葉や態度に発展する前に立ち止まるきっかけをつくる狙いがある。
資料では、身近な場面を題材にした4つの具体的な事例も取り上げている。コールセンター、公共交通機関、小売店、飲食店を舞台に、消費者の不満や焦りがどのような条件と重なるとカスタマーハラスメントにつながり得るのかを紹介。一方、従業員側についても、対応の仕方が消費者の不満や焦りにどのような影響を与えるのかを示している。
こうした事例について、心理学的な視点から望ましいコミュニケーションのあり方を解説しているのも特徴。実際の場面を想定して考えるためのワークシートも付属しており、ロールプレーイングを取り入れた講座や研修などでの活用も想定している。
また、カスハラに至る前段階の不満にも着目。「構造的な不満」と「感覚的な不満」という2つの特徴を取り上げ、カスタマーハラスメントにならないための手がかりや、事業者側がカスハラを生み出さないためのポイントについて、有識者のコメントを交えて紹介している。
カスハラ対策というと、従業員を暴言や理不尽な要求から守るための事業者側の取り組みに目が向きがち。今回の教材は、消費者自身にも自分の感情や言動を振り返ってもらい、トラブルになる前の段階からより良いコミュニケーションにつなげようとしている点が特徴となっている。
消費者庁は、カスタマーハラスメントへの理解を深めるだけでなく、不満や焦りが生じる要因を理解しながら、自らの言葉や態度の傾向を確認できる教材として、カスハラについて考える講座や研修などでの利用も呼びかけている。